研究実績の概要 |
本研究では3Y1細胞を用いて、エンドサイトーシスに関与する分子の探索をおこなった。 当研究室で保有する海洋生物由来の抽出物ライブラリを用いて、培養細胞の形態変化を指標に活性試験をおこなったところ、石垣島川平湾で採取されたシアノバクテリアの粗抽出液が微毒性を示した。そこで、シアノバクテリアを有機溶媒で抽出後、各種クロマトグラフィーを用いて分画し、新規ペプチドを単離した。2次元NMRスペクトルおよびマススペクトルデータの解析から、本ペプチドは9残基のアミノ酸から構成される鎖状ペプチドで、分子内に5連続のNメチルバリン残基を有するユニークな化合物であることがわかった。 構成アミノ酸の絶対配置は、Marfey法を用いてすべてL型と決定した。N末端のN,Nジメチルバリンは加水分解物をフェナシルエステルに導いた後にN-オキシド化に供し、キラルカラムを用いたLC-MSにおける保持時間を合成標品と比較することで、その絶対配置をL型と決定した。 本研究では、形態変化を指標としたスクリーニング試験によって、アクチンおよびV-ATPaseなどを阻害する4種の新規海洋天然物を発見した。以上本研究では、細胞の形態変化を指標としたスクリーニング試験をおこなうことで、エンドサイトーシスを標的とした海洋天然物探索の新しいプラットホームを構築し、その有用性を示すことができた。
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