研究課題
本年度は、現代の塩田の窒素循環を明らかにし、それを踏まえた上でおよそ600万年前に起こった地中海塩分危機時の窒素循環を明らかにすべく研究を行った。シチリア島トラパニの塩田で採取した表層高塩水・間隙水の硝酸およびアンモニア態窒素の濃度と窒素同位体比を測定するとともに、バイオマット試料中のクロロフィルaやバクテリオクロロフィルaを高速液体クロマトグラフィーで単離・精製し、化合物レベルの窒素同位体比を測定した。これらのデータから、塩田では低い窒素同位体比を持つ溶存アンモニアが蒸発したことで窒素同位体比が高くなったアンモニア態窒素が蓄積しており、光合成生物の主要な窒素源となっていることが明らかになった。このように特徴的な窒素同位体比は、過去の高塩環境の窒素循環を明らかにする上で有用な指標となることが期待される。実際に、およそ550万年前の地中海塩分危機最盛期に堆積したシチリア島レアルモンテ岩塩鉱山の堆積物について、クロロフィルの分解生成物であるポルフィリンの単離・精製・窒素同位体比測定を行ったところ、極めて高い窒素同位体比を持つことが今回明らかになった。これは、地中海塩分危機最盛期に塩田と類似した極限高塩環境の窒素循環が形成されていたことを示唆する。一方で、イタリア北部アペニン山脈で採取された地中海塩分危機ステージ1の黒色頁岩層からは、当時の堆積環境においてシアノバクテリアなどの窒素固定細菌が窒素を供給していたことが示唆され、地中海塩分危機時の窒素循環がダイナミックに変動していたことが明らかになった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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