研究課題/領域番号 |
16J07884
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小寺 里枝 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 芸術諸学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、20世紀フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェの芸術理念と造形実践を、戦間期および戦後パリにおける芸術・文化・思想をめぐるダイナミズムのなかで明らかにすることである。19世紀末から20世紀にかけての美術がしばしば「具象から抽象への移行」として、20世紀美術がさまざまに宣言された主義・運動の連続として語られるなか、具象とも抽象ともつかない絵画を制作し、いかなる主義にも属そうとしなかったこの芸術家の位置づけは長らく困難であった。本研究では、造形制作と同時に精力的な執筆活動をおこなったデュビュッフェの活動は“言語/造形の拮抗”という観点から検討されるべきであるとの見解にもとづき、以下の2点を軸に考察を進めている。 1)戦間期~戦後フランスにおける芸術・文化・思想をめぐる諸相考察 2)デュビュッフェによる記述・造形作品の再検討 本年度は、まず1)に関して:同時代パリ画壇・文壇にて文学者ジャン・ポーランが果たした役割の大きさを浮き彫りにするべく、その著作『タルブの花あるいは文学における恐怖政治』を考察した。また2)に関して:ひとつ目の考察テーマとして“物質性”という観点を掲げ、デュビュッフェ作品の分析を行った。言語が直接的には持ち得ない物質性という特質は、デュビュッフェの芸術理念および造形実践においていかなる意味を有していたのか。本考察の成果は平成29年度以降、国内にて論文として発表する予定である。ふたつ目の考察テーマはデュビュッフェの記述において繰り返し問われる“日常性”であり、これに関してはデュビュッフェと17世紀オランダ風俗画との親近性を示し、フランス・レンヌ大学にて行われたコロキアムにて口頭発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画どおり9月以降スイスにて在外研究を行い、造形作品・文献資料調査を進めると同時に、他の研究者らとの議論を通じて20世紀フランスを中心とした言語/造形芸術に関する考察を深化させることができた。全体として、おおむね順調に進展していると判断する。なおデュビュッフェ作品に関して“物質性”と“日常性”というふたつのテーマ考察を同時進行することとなった点に関しては、当初の計画以上の進展と言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降も、当初の研究計画にもとづき、上述2点を軸とした考察を進めていく予定である。
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