研究課題/領域番号 |
16J07924
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 賢人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 高ベータ配位 / 磁場反転配位の自己組織化 / 合体生成 / 定常電流駆動 |
研究実績の概要 |
本研究はプラズマの自律性が一層強くなる高ベータ(ベータはプラズマ熱圧力と磁気圧力の比)配位において,最も自然な状態は何かを探求することを目的としている.代表的な高ベータ配位として磁場反転配位を考えると,その自己組織化現象には二流体・運動論的記述が必須であり,本研究では領域によって自己組織化を支配する物理が異なるという仮説のもと検証を行っている. 実験においては磁場測定用の回路系の設計製作を行い,磁場強度が従来装置比3倍程度の強化を達成した.測定回路には従来の受動型積分器から能動型へと移行することで,高速及び高S/N性能を実現している.また電流・磁束・排除磁束半径・電子温度密度計測の計測器開発も完了している. プラズマの第一原理計算である電磁PIC(Particle In Cell)法の,1/2次元直交座標系及び2次元円筒座標系コードを開発した.従来のPIC法では格子上の電荷密度は電荷保存則を満たさず,補正電場をポアソン方程式より計算するが,並列化が必須な大域計算においては望ましくない.本コードでは厳密に電荷保存則を満たすDensity Decomposition法を用いることで,緩和時間程度の長期実行でも電荷保存則が破れないことを確認した.また本来無衝突のPICにおいて,クーロン散乱を模擬したモンテカルロ衝突項を導入し,電子・イオン間の流速緩和及び熱的緩和現象を正しく記述していることを確認した.上記コードを用いて磁場反転配位を模擬した磁束管にイオンビームを注入し,流速緩和に基づく種電流の減衰を検証し,ビームによって定常の種電流が供給できていない結果を得た.注入されたイオン流は減速時間程度で電子流と緩和し,種電流としては減衰する結果が得られ,実験での配位維持伸長を説明できる結果は得ていない.そのため,座標系を円筒系へ変更し,実際の磁場反転配位に近づけて詳細の検証が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初示した予定と概ね同程度の進捗を得ることはできている.しかし,当初予定していた装置から真空容器の変更等があり,既存の物資の円滑な流用に難が生じている面が存在している.そのため,設備の再構築等に余分な時間と費用を割く場面が多くなっている.しかし,一方,合体前の単一スフェロマックの性能としては装置変更前の3倍程度のポロイダル磁場強度を実現できており,それに伴い抵抗減衰と緩和現象の時間スケールを分離するという点において,有利な状況を構築しつつある.さらにコンデンサバンクと放電回路系の最適化を計画しており,中性粒子ビーム導入に必要な磁束の確保が現実的になってきている.数値計算においても当初共同研究先にコードを提供してもらう計画であったが,変更が生じたため,独自に電磁PICコードを自主開発した.そのため初年度において十分な発表を行うには至っていない.しかし,コードの根幹となる電流計算への電荷保存法の導入,衝突効果の導入等,当初の予定より多機能高性能なコードを構築した.直交座標系コードの初期検証として,ポロイダル磁場で閉じ込めた円柱プラズマにイオンビームを注入することで,種電流の検証を行っている.結果は種電流の駆動には不十分であることが判明したため,円筒座標系PICの開発に着手している.円筒座標系PICは概ね完成し,正確なプラズマ現象の模擬できているか,コードの検証を行う段階にある.コードを一から作成したにも関わらず,当初の予定から大きな遅れとはなっていないが,円筒座標系コードの検証を速やかに行う必要があると考えている.円筒座標系においては,適合粒子細分化法(APR)の導入も同時に進めており,こちらもコード自体は概ね完成しており,現在コードの妥当性を検証している.
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今後の研究の推進方策 |
現在,実験において,磁場や密度温度計測の拡充に伴い,合体生成配位の評価を進めている.今後の方針としては,運動論的粒子を能動的に制御するための中性粒子ビーム源の開発を行う.ビーム源より注入された高速イオンが及ぼす,磁気リコネクション現象及び合体配位形成時の運動論効果の寄与を調べる.また磁場零点領域の種電流を測定することで,中性粒子ビームによる定常電流駆動機構を明らかにする.種電流についてはシミュレーションで検証中であるため,実験との相互検証を行うことでより深い理解を得ることを目指す.またトロイダルモードプローブを導入し,運動論的粒子によるミクロな構造が大規模構造へ緩和する様子を検証する. 並行して,MHD/二流体/運動論全ての物理過程を含んだ適切な磁場反転配位の模擬のために,2次元円筒座標系PICコードの開発を進める.主要部分は概ね完成しており,プラズマと電磁場との相互作用を含んだ物理現象を模擬し,コードの検証を行うことが今後必要となる.一方,通常の円筒座標系コードでは体積要素が径方向位置によって不均一であるため,外側に多くの超粒子が存在することが要求される.これは計算量・メモリ共に不利であるため,現在,適合粒子細分化法の新規開発及び検証を進めている.本手法を用いることにより,体積要素の小さい内側では粒子を細分化し,大体積要素の外側では粒子をまとめて計算を行うことで大幅に計算粒子数を抑えることが期待できる.こちらもコードは概ね完成しており,検証段階にある.周方向のモード構造がイオンビームに対して波動のように振舞うことから,磁場反転配位中の定常種電流駆動機構の有力な機構として考えている.しかし,計算負荷が大きいPIC法において,3次元計算は容易ではないため,RZ二次元に加えて周方向にモード展開することで,計算負荷の増大を抑えつつ,低次モードの高解像計算を行う計画である.
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