研究課題
本年度は研究のアウトプットとして,次ページに記載されているような各種発表に積極的に取り組んだ。結果,査読付き論文1本,シンポジウムにおける話題提供を5回,指定討論を1回,その他ポスター発表を4回発表することになった。詳細は次ページに記載する。研究内容については,社会情緒的特性の発達を検討するための縦断調査を前年度より継続実施し,この結果を論文化に向けて分析をしている途中である。現段階で得られてきている結果は,欧米圏でコンセンサスが得られている発達軌跡と一部共通しつつも,日本人特有の傾向も見て取れ,文化差の視点からも興味深い結果が得られつつある。また,社会情緒的特性の発達と関連する身体発達についても積極的に検討を重ね,身体発達の標準的な軌跡とその年次推移について明らかにすることに成功した (査読付き論文1を参照)。今後は,この身体発達の軌跡と社会情緒的特性の発達軌跡とがどのように関連しているのかをより深く分析していくことになる。加えて,社会情緒的特性の発達軌跡を方向付けることが予想される生活史戦略傾向 (K-factor) について,2017年に入り新たな測定尺度が欧米圏で開発され,より精緻な測定が可能となった。この尺度について原著者とコンタクトをとり,翻訳・標準化ならびに今後の比較文化的な共同研究の実施を計画し,現在実施をしている途中となる。他にも,社会情緒的特性が社会の中でどのようなアウトカムと結びつくのか,または結びつかないのかを検討すべく,こちらも先ほどとは別の欧米圏の研究者と共同研究を実施している。具体的には社会情緒的特性と道徳的な価値観との関連を扱ったもので,現段階で論文を投稿している段階である。こちらも継続的に国際共同研究を実施・継続していく予定である
2: おおむね順調に進展している
予定していた縦断調査については,本年度も無事調査を終了し,次年度へとつなげることができた。また共同研究の実施に向け,国内外の研究者と関係性を構築し,連携をとることに成功している。社会情緒的特性の発達軌跡を方向付けることが予想される生活史戦略傾向に関する共同研究と社会情緒的特性のアウトカムに関する共同研究は,海外の研究者との連携を構築した。前者は次年度の調査実施に向けて現在準備中であり,後者は既に調査を実施し,1本目の論文を投稿する段階に来ている。加えて,社会情緒的特性と身体発達について,特に身体的な疾患に着目した研究も,国内の医学系の研究者と連携した研究を進めている。こちらは既存のデータの利用と,さらに新たなデータの収集もできることになっており,これまでのパーソナリティ心理学研究では見られなかった新奇性のある結果が期待される。なお現段階では2本の論文の原稿が準備できている段階である。
今年度はおおむね順調に,研究推進のための基礎を作ることに成功した。次年度は,今年度分析していたデータについて海外誌に掲載すべく論文化を積極的に行っていく。また以前より継続している国内での縦断調査については,本年度も継続して実施し,より多くの示唆が得られるよう善処する。さらに,次年度は国際調査の実施に向けて,その下準備を行う必要があるため,調査票の作成や配布場所の確保など,具体的な点を決定していくことになる。可能であれば次年度末までには調査を実施できればと考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件)
発達心理学研究
巻: 27 ページ: 379-394