研究実績の概要 |
本研究では、深見池湖底年縞堆積物を用いて、共進化を通した宿主-ファージ多様化の様式を調べることを目的としている。本年度は、年縞堆積物10層のvirome解析を行い、昨年度行った16S rRNA遺伝子を用いた年縞堆積物中のシアノバクテリア群集組成解析結果より選定した3属(ドリコスペルマム属、シネココッカス属およびアファニゾメノン属)を宿主とするファージの遺伝子配列の抽出を行った。イルミナ社MiSeqを用いて配列を決定し、SPAdesを用いてアッセンブルを行った結果、1kbp以上の7~3,114コンティグを得た。次に、global viral database (Cobian et al., 2016) を用いて、FRAP (fragment recruitment, assembly, purification) 法に従って、これらのファージコンティグの宿主同定を行なった。その結果、選定した3属のシアノファージ由来のコンティグを得ることができた。シネココッカス属は1938年以降の層で、プロクロロコッカス属は1662年および2010年の層で、ミクロキスティス属は1756年および2006年以外の8層より得られた。ドリコスペルマム属に感染するファージコンティグを得るため、深見池から分離した3株およびNIES株2株のCRISPR(ファージ感染履歴が得られる領域)の解析を行なった。このCRISPR領域の配列をデータベースとしたファージコンティグのBlast検索によるドリコスペルマム感染ファージの探索を行なった。本解析は継続中であり、現在解析を終了した1層分のファージコンティグより2コンティグをドリコスペルマム感染ファージとして得ている。したがって、本研究より過去350年に渡る堆積物より、シアノファージコンティグを得ることができ、継時的なファージ遺伝子の多様性解析の可能性が示唆された。
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