研究課題
本研究では、タンパク質摂取による糖脂質代謝調節作用における末梢および中枢セロトニンの役割の解明を目的とする。本年度は、肝脂肪合成モニタリングマウスの長期間における有用性の検討および緑豆タンパク質の肝臓における脂肪合成への作用解析を行った。肝脂肪合成モニタリングマウスは、血中ルシフェラーゼ活性を測定することにより肝臓脂肪合成酵素Fasn量を評価することができる新たな肝臓脂肪合成測定ツールである。当該マウスへの高脂肪食飼料の給餌は、通常飼料給餌群に比べて、給餌20週において血中ルシフェラーゼ活性の有意な上昇が認められた。また、この時肝臓脂肪合成酵素Fasnの遺伝子発現は、高脂肪食給餌群において有意に上昇していた。これらのことから、肝脂肪合成モニタリングマウスは、長期間における肝臓脂肪合成酵素Fasn量のモニタリングにおいても有用であることが示された。次に、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを豊富に含くみ、末梢性・中枢性セロトニン作用を増強する可能性を持つ緑豆タンパク質の機能解析を行った。緑豆タンパク質の給餌は、コントロール区と比べて有意に肝臓脂肪量を低下させた。また、肝臓脂肪合成酵素遺伝子発現が緑豆タンパク質給餌マウスにおいて有意に低下していた。さらに、肝脂肪合成モニタリングマウスにおいて20週間の緑豆タンパク質の給餌は、コントロール区において認められる血中ルシフェラーゼ活性の上昇を抑制した。これらのことから、緑豆タンパク質給餌は、肝臓における脂肪合成を抑制することにより肝臓脂肪量を低下させることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、末梢性・中枢性セロトニン作用を増強する可能性を持つ緑豆タンパク質が肝臓脂肪蓄積量を低下させる作用を有することを明らかにした。糖脂質代謝に作用するタンパク質を同定できたことは、セロトニン作用を解明する上で大きな強みになると考えられる。
本研究計画では、セロトニンの糖脂質代謝調節作用の解明を目的として、1)末梢性セロトニンによる糖脂質代謝調節作用メカニズムの解明、2)中枢性セロトニンの糖脂質代謝への作用とその有用性の検討、に取り組む。現在までに、末梢性・中枢性セロトニン作用を増強する可能性を持つ緑豆タンパク質の肝臓脂肪蓄積抑制作用を見出している。今後この緑豆タンパク質の肝臓脂肪蓄積抑制作用に末梢性・中枢性セロトニンが関与するかどうかを検討する。
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