研究課題/領域番号 |
16J08185
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小祝 敬一郎 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | クルマエビ / 血球細胞 / 貪食細胞 / マーカー分子 / アプタマー / RNA-seq / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
昨年度作製した抗クルマエビインテグリンα抗体を用いて,クルマエビ血球細胞の免疫染色を行った.その結果,本抗体は血球細胞の表面に反応すること,全血球細胞中の約50%が陽性であることが判明した.また,ビーズを貪食した血球細胞における陽性率は100%ではなく,インテグリンα鎖陽性貪食細胞および陰性貪食細胞どちらの存在も確認された.このことから、クルマエビの貪食細胞は少なくとも2種類の細胞集団が存在することが示唆された. Percollを用いた非連続密度勾配遠心分離法により,エラ,心臓およびリンパ様組織懸から血球細胞を濃縮し,ギムザ染色およびフローサイトメーター解析を行い血球細胞の濃縮を確認した.それぞれの組織および濃縮された血球細胞からtotal RNAを抽出した後,Illumina MiseqによるRNA-seq解析に供した.代表的な免疫関連遺伝子のみに着目した結果,エラ中の血球細胞のmRNA蓄積パターンは循環している血球細胞と類似していた.一方,心臓およびリンパ様組織中の血球細胞では,循環している血球細胞やエラ中の血球細胞と比べ免疫関連遺伝子のmRNA蓄積量が少ない傾向が示唆された. これまで作製した抗体はポリクローナル抗体であったため,細胞へのアフィニティーが弱く磁気分離法による目的細胞集団能の濃縮が困難であった.そこで,化学合成可能で抗原へのアフィニティーが強いDNAアプタマーを用いて単一血球細胞集団の磁気分離を目指した.Cell-SELEX法にて ,1015程度のランダムなDNAライブラリーから4種類のDNAアプタマーを選別した.各アプタマーは特定の血球細胞に結合することがフローサイトメトリー解析によって確認されたが,磁気分離法への応用には至らなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クルマエビの貪食細胞が少なくとも2種類存在することが本年度の研究によって示唆された.しかし,ポリクローナル抗体を用いても分離が行えなかったためアフィニティーの強いDNAアプタマーの開発を検討した. また,心臓やリンパ様組織でも貪食作用が報告されていたため,組織中の血球細胞の分離技術の開発を行った. 今後に向けたDNAプタマーの選別手法を開発できたこと,組織中血球細胞の分離が可能になったことから研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在,Cell-SELEX法による選別過程を複数集団の血球細胞により行うことで,特定の細胞集団の磁気分離への応用が可能なDNA アプタマーの探索を続けている.今後は本DNAアプタマーを用いた単一血球細胞集団の機能解析を行うことで,どの血球細胞集団が貪食作用を担っていくかを明らかにする予定である.
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