研究課題/領域番号 |
16J08216
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
馬 悦 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | グアニン四重鎖 / 低分子化合物 / G-quartet / Groove / 質量分析 |
研究実績の概要 |
グアニン残基を豊富に含む核酸の一本鎖配列では、グアニン四重鎖 (G-quadruplex; G4) と呼ばれる特殊な高次構造が形成される。G4を形成するDNA配列は、テロメアや遺伝子プロモーター領域を中心に、非常に数多く発見されている。これらG4の機能はこれまで未知であったが、最近がん関連遺伝子のプロモーター領域で形成されるいくつかのG4に、遺伝子発現調節機能が見出された。このような「機能性G4」は、生命現象を担う新たな因子として捉えられ、これらを選択的に安定化する低分子化合物 (G4リガンド) は、G4機能を制御するための分子プローブとして、またG4に存在する疾患への創薬リードとなることから、その創製が望まれている。 G4は当該構造を形成する際に、1価の金属カチオンをG-quartet間に取り込みながら安定化する。この性質を利用し、今年度は、質量分析を用いてG4リガンドの標的サイトの同定を行なった。具体的には、報告されているG4リガンドの中で、入手可能な化合物として、TMPyP4及びPyridostatinを入手し、また、合成可能な化合物として、Phen-DC3及びTOxaPyを合成した。その結果、TMPyP4、Phen-DC3及びPyridostatinは、G-quartet間で取り込まれるカチオン+1つのカチオンが観測され、一方でTOxaPyは、G-quartet間で取り込まれるカチオンの数のみが観測された。このことから、TMPyP4、Phen-DC3及びPyridostatinは、G-quartetとスタッキングするG-quartet標的型のリガンドであり、TOxaPyは、Groove標的型のリガンドであることを見出した。以上の結果から、今後は新規二分子型G4リガンドの創製を行い、標的とするG4を介した生命現象の解明を計る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析を用いてG4リガンドの標的サイトを同定することができたため。具体的には、報告されているG4リガンドの中で、TMPyP4及びPyridostatinを入手し、また、Phen-DC3及びTOxaPyを合成した。これらを用いて質量分析による解析を行ったところ、TMPyP4、Phen-DC3及びPyridostatinは、G-quartetとスタッキングするG-quartet標的型のリガンドであり、TOxaPyは、Groove標的型のリガンドであることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
Groove標的型G4リガンドの構造展開を行い、当研究室で開発しているG-quartet標的型リガンドであるOTD類に対し、系統的に導入することを計画する。導入は、共有結合を介して行い、導入する位置、及びOTD類とGroove標的型リガンドとを結ぶリンカー長について詳細な検討を行う。合成した新規二分子型のG4リガンドを用いて、既知の機能性G4配列に対する選択的な安定化能を評価する。
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