研究実績の概要 |
本研究の目的は,ギ酸/二酸化炭素対の生物電気化学的相互変換系を構築し,炭素数1の化合物の酸化還元反応を軸とした新規エネルギー戦略を提言することである.前年度では,タングステン含有ギ酸脱水素酵素(FoDH1)を用いた高効率なギ酸イオン酸化・二酸化炭素還元極の構築に成功した.平成29年度では,FoDH1を用いたギ酸イオン/酸素バイオ燃料電池の構築および FoDH1の直接電子移動型(DET型)反応の観測に適した新規電極の作製と,FoDH1の特性評価を行った. 前者において,前年度の結果に基づいてバイオ燃料電池の電極設計を行った.ギ酸イオン酸化極としてFoDH1とビオロゲンポリマー(VP)を利用した.酸素還元極では,触媒として酸素の4電子還元を触媒する酵素であるビリルビンオキシダーゼ(BOD)を用いた.このとき,溶解度の低い酸素を用いるため,気相の酸素を直接利用可能なガス拡散電極を利用した.また 2,2'-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid),(ABTS)を酵素-電極間の電子伝達を仲介させた.性能評価の結果,世界最高出力密度となる12 mW cm-2を達成した.本出力密度は,市販されている太陽電池の出力密度(10~20 mW cm-2)に匹敵しており,本バイオ電池は実用化に資すると考えられる.本成果は,ACS Catal.誌に掲載済みである. 一方,FoDH1のDET型反応活性の向上を志向して,その足場となる新規電極を作製し,測定結果を解析した.具体的には,金ナノ粒子を修飾した多孔質炭素電極を開発し,大幅な触媒電流の上昇を達成した.また,得られた電流―電圧曲線を簡便に解析する手法を考案し,FoDH1の電極反応サイトの同定と,その酸化還元電位の評価を行った.本成果は,Electrochem. Commun.誌に掲載済みである.
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