研究課題
酸化物MgOをIV族強磁性半導体GeFe薄膜の上に成長し、トンネル磁気抵抗(TMR)素子を作製した。また、そのTMR素子の結晶性評価、トンネル伝導及び磁気抵抗の測定を行った。透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果から、単結晶エピタキシャルFe/MgO/GeFe多層構造が作製されていることを確認した。またそのトンネル抵抗はMgO障壁層の膜厚の増加によって指数関数的に大きくなることから、MgO障壁がトンネル障壁として機能していることを確認した。3.5Kでの磁気抵抗測定によって、上部Feと下部GeFe層の磁化の相対的な向きの変化に対応した明瞭なTMR効果の観測に成功した。IV族強磁性半導体を用いたTMR効果の観測は本研究が世界初である。以上の結果より、GeFe中のフェルミーエネルギー付近での伝導キャリアがスピン分極していることが示され、GeFeがスピントロニクス応用へ有望な材料であることが分かった。得られたTMR比は素子の微細化や、GeFe層中のFe原子濃度の増加によって上昇し、Fe原子濃度10.5%、素子サイズ5μmにおいて1.5%の値が得られた。さらなるTMR比の上昇のためにはGeFeの電子構造の解明が必要不可欠であるが、角度分解光電子分光(ARPES)測定の結果から、GeFeの磁気特性は不純物バンドモデルで説明されることを明らかにした。また、ARPES測定によって得られたバンド構造と第一原理計算との比較から、GeFe中のスピン分極は約70%ほどと非常に大きな値を持つことが明らかになり、このことからもGeFeがスピントロニクス応用へ有望な材料であると言える。その他の展開としては、Ge中にFeではなくMnを添加したグラニュラー薄膜GeMnやSi基板上にエピタキシャル成長したスピネルCoFe2O4に対するX線磁気円二色性測定を行い、その磁気特性や磁気抵抗の起源を明らかにした。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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