研究課題/領域番号 |
16J08299
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
重神 芳弘 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 超対称大統一理論 / フレーバー物理 / CP対称性の破れ |
研究実績の概要 |
当該年度は研究課題である「超対称大統一理論を用いた模型の構築」に関連して、以下の3つの研究成果を論文にまとめた。 1つ目は、素粒子標準模型を超える枠組みである超対称大統一理論に基づいた模型に関する研究である。本研究では、新たなゲージ粒子が媒介することによって生じるフレーバーを破る相互作用に着目し、それらを数値的に精度良く見積もることで現在の実験結果や将来の実験精度と比較した。低エネルギーの物理現象から、高エネルギーの理論に基づく模型で予言される事象を探った本研究は、低エネルギーの実験における模型の検証可能性を明らかにしたという点において非常に意義がある。 2つ目は、現在実験で確認されている標準模型の予言からのずれを説明する模型に関する研究である。本研究ではこのずれを説明するために、標準模型に新たな相互作用を加え、各粒子にそれぞれ異なる電荷を付加した模型を構築した。これにより、ずれの説明可能性を議論することができ、模型のパラメータへの制限が明らかになった。本研究は最新の実験結果に則した研究となっており、今後の研究の発展に貢献した点で価値のある研究と言える。 3つ目は、超対称性粒子の質量に対するカラー電気双極子モーメントからの制限の研究である。本研究では特定の質量構造に着目し、大統一スケールにおけるパラメータ構造による制限の違いを調べた。これにより、制限を満たすために必要な高エネルギーでのパラメータ構造が明らかになった。この点において本研究は非常に意義があり、今後の研究で重要な役割を担う研究であると言える。 いずれの研究も、低エネルギーにおける最新結果を考慮した研究であり、自らの研究のみならず、素粒子物理学の発展に貢献した重要性の高い研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの本研究課題の進捗状況は、当初の研究計画に従っておおむね順調に研究を進めることができている。特に当初計画していた2つの研究のうち、一方の研究は既に結果が得られ、論文としてまとめて研究成果を発表することができた。もう一方の研究は現在進行中である。この研究に対しては、既に計算に用いるためのプログラムの導入は完了しており、今後素粒子の質量や素粒子同士の混合を表すパラメータといった測定量から模型のパラメータを決定して、実験結果と比較することで研究成果を報告することができると期待される。 この他にも、研究計画には無いが本研究課題に関連している研究を現在までに2つ行い、それぞれの研究成果を論文にまとめて発表することができた。これら2つの研究は、一方は現在の実験結果を再現する模型を構築して模型のパラメータの制限を議論したものであり、もう一方は超対称大統一理論で得られる超対称性粒子の質量構造に対するカラー電気双極子モーメントの制限を議論したものである。いずれの研究成果からも、本研究課題である「超対称大統一理論を用いた模型の構築」の研究遂行に有用な計算手法や必要な情報・知見を得ることができた。 当該年度に行い研究成果を発表した研究は、国内会議・国際会議を問わず数多くの研究会で発表を行った。これらの研究会においても、他の研究者の発表や議論を通して本研究課題の研究遂行に有用な情報や知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず当初計画していた研究のうちまだ結果が得られていないものに関して研究を進める。この研究に関しては、自然な仮定のもとで現在の実験結果を実現できる魅力的な模型を用いて行う。 この模型が持つパラメータは他の模型より少なく、これらを素粒子の質量や素粒子同士の混合を表す測定量から決定することが可能である。そのため、まず初めに現在測定されている素粒子の質量などの測定量から、模型のパラメータを決定する。次にこれらのパラメータを用いて、導入したプログラムを駆使し現在の実験からの制限を満たすことを確認する。さらに、この模型で新たに導入される粒子の質量構造を精度よく計算し、模型で生じる質量補正項の現在または将来の実験からの観測可能性を探る。これにより、実験で得られる測定量から模型の検証可能性を明らかにする。以上により得られた結果を論文にまとめ、研究成果として発表する。 本研究課題の最終段階として、まずこれまでに得られた結果を考察・吟味し、自然の記述に適した模型を構築する。次に、完成した模型から得られる特有の予言を調べ、将来の実験における観測可能性を探る。可能と判断した場合には測定すべき観測量を明らかにし、不可能と判断した場合は実験では観測できていない新たな物理の可能性を考慮して再考する。以上により得られた結果や議論を論文にまとめ、研究成果として発表することにより本研究を完遂する。
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