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2016 年度 実績報告書

非在来型触媒プロセスによる芳香族炭化水素の水蒸気改質反応

研究課題

研究課題/領域番号 16J08316
研究機関早稲田大学

研究代表者

瀧瀬 賢人  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード水蒸気改質 / 芳香族炭化水素 / 水分子の解離活性化 / 酸化物の表面解析 / 電場印加反応場
研究実績の概要

1.芳香族炭化水素の水蒸気改質における触媒担体が持つ役割の検討
芳香族炭化水素の水蒸気改質反応では触媒表面に炭素が析出しやすく触媒表面の活性点の閉塞が生じやすい。一般的に触媒は活性金属と酸化物の組み合わせから成る。活性金属Coを担持させるための触媒担体としてRedOx性能(酸化物内格子酸素の移動性)を期待できるペロブスカイト型酸化物を幾つか試した。
その結果、SrをドープしたLaとAlの複合酸化物が高いトルエン改質活性を示した。これは活性金属Coの高い分散性と格子酸素の高い移動性が両立したためである。電子顕微鏡等を用いた触媒表面分析からLa酸化物の金属カチオンを低価数の金属カチオンで置換することでCoが高い分散性を保ちながら触媒表面に保持されることがわかった。その際、異価カチオンとしてH-OH結合の解離活性化能が高いSr及びCaを用いると解離活性化された酸素種が改質反応を大いに促進する。
2.電場印加反応場におけるトルエン水蒸気改質反応
芳香族炭化水素の改質は吸熱反応であり従来873-1173 Kの高い反応温度を要求するが、自動車排熱を含む多くの産業排熱は473 K程度である。そこで触媒層に電場を印加し、反応の低温化を目指した。種々の酸化物にNiを担持して反応温度473 Kにてトルエン改質を実施した。結果として、少ない投入電力量で高い触媒活性を示したのはアルカリ土類金属をドープしたLaとAlの複合酸化物であった。電場のアシストにより熱のみでは反応が進行し得なかった低温度域でトルエンの水蒸気改質を進行させることが可能となった。
電場の印加効果を解明するために本触媒上で活性化エネルギーと反応原料の分圧依存性を測定した。電場を印加した場合のみ活性化エネルギーの低下及び水蒸気分圧の依存性の低下が観測されるため、電場の印加によってH-OH結合の解離活性化が促進されていると考察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

芳香族炭化水素の水蒸気改質反応において熱のみを供給して反応を進行させた場合の酸化物担体の役割を種々の酸化物上で改質反応を進行させることで検討することができた。本研究成果はApplied Catalysis A: Generalに投稿されている。
また本年度の目標は電場印加が可能な触媒反応装置を作製して最適な触媒を探索することであったが
、当初の目的を達成した。熱のみの触媒反応でも高い活性を示したアルカリ土類金属をドープしたLa-Alの複合酸化物が電場改質反応でも高い活性を示した。そのためこれまでの研究から得られた知見が今後の研究に活きることも大いに期待できる。
その上で本触媒上でアレニウスプロットの作成や分圧依存性試験などの速度論解析を実施することができ、研究の推進方策を思慮しやすくなった。

今後の研究の推進方策

触媒層に電場を印加することで従来の熱のみでは反応が進行しない低温度域で触媒反応が進行したが、これは印加電場が水の解離活性化を促進したためだと考えられる。電場印加反応場においては触媒層内を電荷が移動するため、グロータス機構(水が回転運動をしながらプロトン輸送をする表面伝道機構)などの特有な現象が観測されている。また、既往の研究では酸化物内に含まれる格子酸素イオンの移動はより高い温度域でしか発現しないと考えられていたが印加電場のアシストによって473 Kといった低い温度で格子酸素の移動性が向上しRedOx機構(酸化物内外における格子酸素または電荷の授受)が発現した可能性もある。水分子によるプロトン表面伝導及び格子酸素の活性化は反応原料である水分子の解離活性化すなわち低温度域における反応速度の向上に寄与できるため、これらの伝導機構の発現の有無を確認することには大いに意義がある。よって今後電場印加反応場においてIn-situ IR測定を実施することで表面水分子の挙動を観測し、また同位体酸素を用いた同位体過渡応答試験を実施することで格子酸素の挙動を確認する。
また熱のみの触媒反応と電場印加反応場における触媒反応では同値の活性を示す場合でも両者の生成物選択性は異なることがわかった。そのため電場印加反応場においては活性金属であるNiの酸化還元状態が異なることが考えられる。よって電場印加の有無及び反応前後におけるNiの酸化還元状態をXPS測定を用いて詳細に検討するとともに、電場を印加している間のNiの酸化還元状態をIn-situ XAFS測定を用いて観測する。触媒を構成する活性金属と金属酸化物、両者の電場印加時の状態を観測することで芳香族炭化水素の水蒸気改質反応における電場印加効果及び反応機構を考察する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Anchoring effect and oxygen redox property of Co/La0.7Sr0.3AlO3-d perovskite catalyst on toluene steam reforming reaction2017

    • 著者名/発表者名
      Kent Takise, Shota Manabe, Keisuke Muraguchi, Takuma Higo, Shuhei Ogo, Yasushi Sekine
    • 雑誌名

      Applied Catalysis A: General

      巻: 538 ページ: 181-189

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.apcata.2017.03.026

    • 査読あり
  • [学会発表] 電場印加低温反応場における芳香族炭化水素の水蒸気改質2017

    • 著者名/発表者名
      瀧瀬賢人・村口敬亮・真島智宏・小河脩平・関根 泰
    • 学会等名
      触媒学会、第119回触媒討論会
    • 発表場所
      首都大学東京
    • 年月日
      2017-03-21 – 2017-03-22
  • [学会発表] Influence of oxygen redox property and anchoring behavior on Co supported catalyst during toluene steam reforming reaction2016

    • 著者名/発表者名
      瀧瀬 賢人・眞鍋 将太・村口 敬亮・比護 拓馬・小河 脩平・関根 泰
    • 学会等名
      石油学会、46回石油・石油化学討論会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-18

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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