研究課題/領域番号 |
16J08325
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 裕通 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 都市認識 / ダイアログ手法 / 発見的 / 価値付け / スケッチ / 創造性開発 / デザイン / 建築設計 |
研究実績の概要 |
2015年度~2016年度にかけて、北区紫野地域において開発した「ダイアログ手法」を9名の居住者対象に実施し、ダイアログの参加者は居住者と共に作り上げた「都市認識」を基に実空間において都市現象を発見的に価値付ける都市探索を行い、手法の応用性や「都市認識」の活用可能性を確認した(【申請書における課題1】に対応)。その研究成果は2016年度に、国際会議2件の発表、国内で査読論文1編登稿(修正)中、同時に、学会大会・支部研究会等での口頭発表(7本)を行った。 2016年度は引き続き紫野地域において、現在空き家である実際の長屋のリノベーション提案を行う、学生による設計ワークショップを実施した(【申請書の課題2】に対応)。これは人の思考の中にある抽象的な像ともいえる「都市認識」の知見を、実在の市街地の一画や建築空間に具体的な設えや構造物の設計に帰着できるか、聞くことだけでなく創ることにも「ダイアログ手法」が応用できるかを検証している。前述の都市探索に参加した者を含む6名の建築学生から2人1組でグループを組み、3回の設計エスキスと合評会を行い、各プロセスにおけるスケッチや発話内容、及び成果物から考察した。この実験は一通り終了し、結果の考察精度をあげることで一連の研究結果がほぼ出そろうと見込まれる。以上の研究成果を現在、国内の査読論文に執筆中であり、学会大会・支部研究会等での口頭発表へも梗概を提出済みである。 以上から「ダイアログ手法」を用いた「都市認識アプローチ」導入によって、「抽象的な地域らしさの捉え方が新しい発想の支援となる」等の有用性が確認出来ており、今後研究の全体フレームや理論的な補強を行うことで、一連の体系的手法としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記述した通り、申請書提出時における課題1、2が概ねその成果が確認出来たためである。但し手法の開発において、限られた条件内での実施である為、必要十分な方法やベストな方法とは必ずしも言いきれない部分は残る。しかし、これまでの成果から、「都市認識」の考え方やスケッチを用いて逐一頭の中を外在化し了解し合う対話方法等「都市認識アプローチ」導入による思考への影響が確認でき、少なくとも手法としての有用性は確認出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、物理学者D・ボームが提唱し様々な分野で再注目されている「ダイアログ(dialogue)」を導入し、居住者が固有に抱く地域への価値付けを基に、「現象の価値判断においてその都市・地域らしさとして根拠となるような固定化されていない抽象的な捉え方(都市認識)」を共に作り上げる実践可能な手法(ダイアログ手法)を基礎技術とした一連のデザイン方法を開発するものである。大きく研究課題は3つ有り、①基礎技術「ダイアログ手法」の開発、②実空間における発見的価値付けへの「ダイアログ手法」の応用、③具体的な対象に対する建築デザインへの「ダイアログ手法」の応用である。2016年度までにおいて①~③の成果が凡そ確認出来ているため、今後は「都市認識」の理論的研究、「都市認識アプローチ」の全体フレームの再構成、京都・西陣や紫野におけるフィードバック等が課題となる。以上全ての研究成果をまとめて、本年度は博士論文を執筆予定である。
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