研究実績の概要 |
1)糖尿病者と非糖尿病者の肺機能の比較 2008~2013年度に人間ドックを初回受診した40-69歳の者、15,516名を対象とした。空腹時血値126mg/dl以上、HbA1c値6.5%以上、糖尿病治療中または既往あり、のいずれかに当てはまる者を糖尿病者と定義した。肺機能の指標には、%肺活量と一秒率を用いた。糖尿病者は1,475名であった。性・年代で層化した共分散分析の結果、男女とも全ての年代において、糖尿病者は非糖尿病者に比べて、多変量調整後の%肺活量が有意に低かった。一方、多変量調整後の一秒率は、男性では全ての年代で、女性では50代、60代で糖尿病者と非糖尿病者間で有意な差は認められなかった。 2)糖尿病患者の肺機能障害発症リスク検討 2008年度に人間ドックを受診した40-69歳の7,534名を対象とした。1)と同様に糖尿病者を定義した。拘束性肺機能障害は%肺活量80%未満、閉塞性肺機能障害は一秒率70%未満で定義した。7,534名を拘束性肺機能障害又は閉塞性肺機能障害発症、又は2014年3月まで追跡した。その結果、追跡期間中に171人が拘束性肺機能障害を、639人が閉塞性肺機能障害を発症した。性、年齢、身長、腹部肥満の有無、喫煙情況(非喫煙・禁煙・喫煙)、運動習慣の有無、収縮期血圧、HDLコレステロール、対数変換した高感度CRP、ベースライン時の肺機能を調整した拘束性肺機能障害発症のハザードリスク(HR)と95%信頼区間(95%CI)は非糖尿病者に比べて糖尿病者で1.57(1.04-2.36)であった。一方で、多変量調整した閉塞性肺機能障害発症のHRと95%CIは非糖尿病者に比べて糖尿病者で0.93(0.72-1.21)と有意な上昇は認めなかった。本研究から、糖尿病者は非糖尿病者に比べ、閉塞性肺機能障害発症ではなく拘束性肺機能障害発症のリスクが高いことが明らかになった。
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