研究課題
試験管の中で再構成可能なシアノバクテリアの概日時計は中心振動体であるKaiCのリン酸化状態の往来が24時間周期で変動する。これまで,その分子メカニズムは不明なままである。本研究では,KaiCのリン酸化状態が往来する際の高次構造変化に着目して,Blue Native PAGE (BN-PAGE)を用いて解析した。BN-PAGEで解析するとKaiCは二つのバンドとして検出された。これらのバンドは分子量マーカーから上側のバンドが六量体KaiC,下側のバンドが単量体KaiCと推察された。しかし,より詳細に検証するとBN-PAGEの際に添加するCBB G-250依存的に一部の六量体KaiCが単量体に解離していたことが判明した。この結果から,KaiCに「解離しにくい構造:gs-KaiC」と「解離しやすい構造:cs-KaiC」が存在することが明らかになった。生物時計再構成系におけるKaiタンパク質とその複合体の挙動をBN-PAGEで解析すると,KaiCの高次構造変化も24時間周期で変動していた。8つのリン酸化模倣変異型KaiCを用いて,KaiCのリン酸化状態とcs-KaiCの関係を調べると,高リン酸化状態と脱リン酸化状態の初期でのみcs-KaiCが検出された。さらに,cs-KaiCにのみKaiBが結合することが明らかになった。本研究から,KaiCには2つの構造状態が存在し,cs-KaiCにのみKaiBが結合し,構造変化も約24時間の周期性をもって変化することを見出した。興味深いことにcs-KaiCとなるリン酸化状態は位相同調の原因と考えられている単量体交換が起きる位相と同じであった。本研究から明らかになったKaiCの構造変化が位相同調に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
KaiCの構造変化と位相同調の関係を検証するために,ヘテロ六量体KaiCを用いる。その為に,異なった2種類のタグ付KaiCを調製し,それらのKaiCを単量体化した。単量体KaiCを混合してから再度六量体形成させることで,六量体KaiC分子内に異なったタグをもつヘテロ六量体KaiCを調製した。
混合する単量体KaiCの量比を変更することで,様々なヘテロ六量体KaiCを作製する。作製したヘテロ六量体KaiCを用いて,リン酸化状態と構造変化の関係,ならびにそれらの活性が位相同調現象に関与するか検証する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 1-11
10.1038/srep32443
巻: 6 ページ: 1-7
10.1038/srep35567