研究課題
グリーンランド氷床北西域に飛来する鉱物起源の時間変化を明らかにするため,走査型電子顕微鏡を用いて氷床コア中の鉱物粒子の形態観察および組成分析を行った.今年度は1960-2013年のサンプルを観察し,昨年度の1915-1960年の結果と合わせた100年間の変動について考察した.鉱物の粒径はいずれも3μm以下と小さく長距離輸送の目安となる5μmを下回った.しかしながら,1915-1960年および1990年以降は粒径が比較的粗い粒子が含まれた.氷床コア中の鉱物はケイ酸塩鉱物が8割を占め,なかでも粒径の細かい粘土鉱物が多く含まれた.その組成はサンプル間で異なり,さらに2つの異なる時間スケールでの変動を示した.1つ目は数十年スケールの変動で,1950年と2000年を境に鉱物組成が大きく変化した.①1915-1950年および2000年以降は粘土鉱物のカオリナイトの割合が減少したのに対し,雲母類,緑泥石,長石,石英,苦鉄質鉱物の割合が増加した.また,②1950-2000年はその反対の傾向が見られた.一般にカオリナイトは湿潤温暖な中低緯度地域,雲母類,緑泥石,長石は寒冷で乾燥した高緯度地域に多く形成され,さらに苦鉄質鉱物は大気中ダストにほとんど見られないことから,①の時期はグリーンランド周辺からも多くの鉱物が供給されていた可能性がある.過去の気温データと比較すると,この時期は世界各地で気温が上昇傾向にあり,夏期の積雪被覆域が減少して高緯度地域および氷床末端からの鉱物の寄与が増加したと考えられる.2つ目は10-15年スケールの変動で,上記同様カオリナイトと雲母類・緑泥石・長石の割合が逆センスの変動を示した.このことは,氷床上の鉱物の起源が周期的に変化していることを示している.この変動には北極振動や北大西洋振動などの大気循環変動が影響している可能性があるが,はっきりとした相関は見られなかった.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Geoscience
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