研究課題/領域番号 |
16J08385
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春日 亮佑 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ロック / 知識 / 生得説 / 道徳的知識 / 論証的知識 / 論証道徳 |
研究実績の概要 |
研究題目「ジョン・ロックの知識論と所有論との横断的な哲学研究--知的所有権の正当化」について、今年度はロックの『人間知性論』(以下『知性論』)をメインテキストに扱い、『自然法論』も補助的に用いながら、彼の知識論の内実を明らかにし、歴史的再構成と合理的再構成を行うことを目指した。 そこで、『知性論』第1巻で展開されるロックの生得説批判について検討した。結果、ロックが批判の対象として念頭に置いていたのは、普遍的同意を根拠に知識や原理の生得性を主張するサウスやスティリングフリートらであったこと、ロック自身は寧ろ、ケンブリッジ・プラトニストらとほとんど相違ない立場を採っていることがわかった。こうした研究の成果は、日本イギリス哲学会やジョン・ロック研究会、Hongo Metaphysics Clubで報告したが、『統治論』との整合性、デカルトとの対比という点で課題を残した。今後は、これらの難点を解決し、以上の研究をまとめた論文を提出する予定である。 同時に、ロックの論証的知識と道徳的知識についての研究も行った。ロックは知識を直観的知識、論証的知識、感覚的知識の3つに分類し、道徳的知識を論証的知識として捉えているにも拘わらず、これまで有益な成果を挙げた研究は少ないからである。結果、道徳的知識が位置づけられる論証的知識の認識プロセスが、従来捉えられてきたような論理的推論としての演繹プロセスではなく、その発見法であり、ある命題を知識として獲得するためには、その命題が予めたてられていなければならないこと、そしてそれはまさしく、たてられた問いについて概念分析を行うことであることを明らかにした。さらに、概念分析することは狂信の回避だけでなく、法廷の場においても要求されることも明らかにした。これらは、東洋大学国際哲学研究セナター主催の連続研究会や哲学会での発表、『論集』における論文にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、今年度は『知性論』における知識論の内実についての歴史的再構成と合理的再構成を行い、学会や論文で報告することが出来た。とりわけ、学会での質疑応答を通して、本研究が補強せねばならない点が明らかになった。 また、研究会も主催し、そこで現代分析哲学や近世フランス哲学を専門的に研究する若手研究者とロックのテキストを精読することが出来た。この点において、研究の進捗状況は予想以上と言ってよい。しかし、その一方で、2年目に計画していた『統治論』の精読を通じての所有論研究を前倒しして行うことは出来なかった。以上が、「おおむね順調に進展している」と評価する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度の課題として残った生得説批判の議論の弱点を補強し、論文として提出することが当面の課題である。こうした研究は5月中に完了させる予定である。その後に、『統治論』の精読を通じて、ロックの内実とその現代的意義を、知識の所有権という観点から明らかにしたい。そのため、ロックの文献だけでなく、現代の著作権や特許権に関する文献を読解し、さらに定期的に法学・政治学・メタ倫理学を専門とする研究者と議論を行うことで自身の議論を陶冶したい。以上の研究成果を国内外の学会や雑誌を通じて報告するつもりである。
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