研究課題/領域番号 |
16J08419
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
熊谷 幸汰 宇都宮大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ボリュームディスプレイ / フェムト秒レーザー / 空間光変調 / ホログラフィ / マイクロバブル |
研究実績の概要 |
本研究のテーマはホログラフィックレーザー描画手法の確立と,スクリーン材料の特徴を活かしたボリュームディスプレイの提示,およびそれらの体系化である.ホログラフィックレーザー描画は計算機ホログラムによりボクセルの数や形状,位置を空間的にデザインする手法である. これらの目的のもと,本年度において実施された研究のひとつが3次元的な画素(ボクセル)としてバブルを用いたボリュームディスプレイ”Volumetric bubble display”の開発である.フェムト秒レーザーの集光照射により液体スクリーン内の任意の3次元位置にバブルを生成する.スクリーンに高粘度液体を用いることで浮上速度の遅いバブルをつくりだし,結果として立体映像描画を可能にした.このディスプレイは,透明な液体中に光アクセスでボクセルを生成するため描画された映像に広い視野角を与える.また,バブルをボクセルとして用いているため異なる色の照明光でカラー化ができ,液体を流すことで映像の描きかえも可能である.さらに,ホログラフィックレーザー描画手法により,バブルボクセルを多点同時に生成しバブルの光散乱強度(映像の明るさ)をコントロールについても検討した.以上をまとめた成果は,アメリカ光学会(OSA) が発行する学術論文誌Opticaで発表された. さらに筑波大学,東京大学との共同研究プロジェクトとしてフェムト秒レーザー誘起プラズマと超音波を組み合わせた空中触覚提示手法を提案した.この手法の開発は,以前実施した触れる空中ディスプレイにおける,空中映像の触り心地に焦点を置き,超音波との組み合わせにより解像度の異なる触覚表現を提示するというコンセプトのもと実施された.被験者30名(男女各15名)による触覚評価実験,空中点字の描画,拡張現実との組み合わせの結果をまとめた成果は,国際会議ACM CHI 2016で発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において,フェムト秒レーザー誘起バブルを用いたボリュームディスプレイの開発を予定していた.この研究は現在までに,フェムト秒レーザー誘起バブルの生成とレーザー照射エネルギー,照射パルス数の関係の考察,ホログラフィックレーザー描画を用いたボクセルの多点同時生成による輝度値のコントロール,立体映像の描画,カラー化された映像描画の結果が得られた.立体映像の描画はスクリーンに粘度の高い液体を用い,浮上速度の遅いバブルをつくり出すことで実装された.また,我々はバブルボクセルが散乱することで可視化される特徴を活かし,照明光の色を変えることでカラー化できることを示した.これらの成果は,学術論文誌1件,国内・国際会議5件で発表された. また,フェムト秒レーザー誘起プラズマを用いた空中触覚,音源の描画の研究も予定されていた.空中触覚の提示は,超音波との組み合わせにより実装された.この研究は現在までに,被験者30名による触り心地の評価実験,空中点字の描画や拡張現実との組み合わせのようなアプリケーション検討を行った結果が得られた.これらの成果は,国際会議発表ACM CHI2016に採択された.空中プラズマによる音源描画の研究については,まだ論文誌への投稿や学会発表のような公表にたどり着いていない.しかし現状いくつかの基礎データを取得する実験を残すのみとなっており,来年度中には論文として発表する予定である. 以上の本年度得られた成果を考慮すると,本研究課題の進捗状況はおおむね計画どおりである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施したフェムト秒レーザー誘起バブルを用いたボリュームディスプレイは,映像の描きかえやフルカラー化,映像サイズの拡張について課題を残している.そこで,これらの課題を解決する手法を検討する.映像の描きかえ手法に関しては,超音波により液体スクリーン内部に流れを誘起することで実装しようと考えている.フルカラー化の実装はプロジェクターのような変調された照明光を用いることで対応する予定である.また,映像サイズを拡張にするために,スクリーン媒質,それを封入するガラスセルおよび空気との屈折率差によって引き起こされる収差を補正する必要がある.これは,ホログラフィックレーザー描画を用いて,収差補正用の位相ホログラムを設計しレーザー波面に与えることで解決する予定である. 多層蛍光スクリーンを用いたボリュームディスプレイに関しても同様に,フルカラー化の課題が残っている.これは,ひとつの層に異なる蛍光色を示す材料を集光点サイズで塗布することで解決できると考える.我々は集光点サイズでの蛍光材料塗布をレーザー誘起前方転写法などの塗布技術で実現する予定である.スクリーン構成,ホログラフィックレーザー描画による色の切り替えを検討しながら,フルカラーの立体映像描画を目指す. 我々は空中プラズマによる音源描画を筑波大学,東京大学との共同プロジェクトとして進めている.この研究は,空中プラズマから発生する音場を測定する実験や音程変化手法の実験を残している.したがって,今後これらの実験も進めていく予定である.
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備考 |
上記特許の発明者が32文字以内に収まらなかったため以下に示す. Yoichi OCHIAI, Takayuki HOSHI, Jun REKIMOTO, Kota KUMAGAI, Satoshi HASEGAWA, Yoshio HAYASAKI
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