研究計画の通り、本年度申請者はシンコナアルカロイドから誘導した二官能性有機触媒を用いた芳香族求電子的ハロゲン化反応を利用した軸不斉キノリン誘導体の効率的な不斉合成手法を開発し、高いエナンチオ選択性で目的化合物を得ることができた(Chem. Eur. J. just accepted(DOI: 10.1002/chem.201701707)にて報告。日本化学会第97春季年会にて口頭発表)。キノリン骨格を有する化合物は配位子や生物活性物質としての利用が古くから知られているが、ヘテロ原子の配位等が問題となり、軸不斉を有する含キノリンヘテロビアリールのエナンチオ選択的な合成例はほとんど達成されておらず、本手法により、様々なキノリンビアリールを高エナンチオ選択的に合成することができた。 なお、本手法はヨウ素化反応にも適用できることを見いだしており、これについて更なる検討も行った。その結果、生成物として臭素とヨウ素の二種類のハロゲン原子を選択的に導入して軸不斉キノリン誘導体を高いエナンチオ選択性で合成することができた。 反応機構に関する考察も行っており、本反応においては二段階目のハロゲン原子導入反応においてエナンチオ選択性が決定されていることが示唆されている。これは申請者がこれまでに報告していたハロゲン化に基づく軸不斉化合物のエナンチオ選択的合成とは異なる傾向であり、更なる反応機構に関する詳細を今後解明していこうと計画している。
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