研究課題/領域番号 |
16J08498
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹村 泰斗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | MeVガンマ線 / TPC / シンチレータ |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は長期気球実験(SMILE-3実験)により26Alの銀河マップをPSF(50% include)~ 5度以内の高精度で観測することで、大質量星の過去の分布を特定し、Alの星生成領域-巨大星との相関を発見、銀河内の物質循環の機構を解明することである。しかし、長期気球実験による観測の前に、MeVガンマ線望遠鏡Electron-Tracking Compton Camera(ETCC)の天体撮像能力の実証は必須である。そのため、平成30年度4月にsub-MeV帯域で明るく輝くかに星雲と銀河中心をターゲットとして、フライト時間約26時間の気球観測(SMILE-2+実験)を行った。 平成29年度本研究はSMILE-2+用のETCCを一から作り上げ、その評価を行った。 我々が開発したPrototype-ETCCでは300 keV以上の高エネルギーガンマ線に対して有効面積が大きく減少し、SMILE-2+実験の要求を満たすことができなかった。そのため、平成29年度の5月ごろからSMILE-2+用にシンチレータ検出器をガス容器内に入れ込むという大きな設計変更を伴ったETCCを一から作り上げ、秋ごろに完成させた。秋には宇宙科学研究所にて熱環境試験を行い、SMILE-2+システムが気球環境にて健全に動作することを確認した。冬に実験室内にてRIを用いた地上測定を行うことでETCC動作を確認、ガス純化システムの評価、有効面積の評価を行った。3月以降はオーストラリア、アリススプリングスにてSMILE-2+放球準備を行い、平成30年度4月に放球、観測、回収に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の本研究は順調に進展した。 平成29年度の本研究は、平成30年度4月のSMILE-2+実験準備が主であったが、大きな滞りはなく望遠鏡の作製、環境試験、性能評価を進めることができた。現地準備も問題なく進めることができ、平成30年度4月に無事SMILE-2+気球の放球、観測、回収に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は地上実験データと気球観測データを用いて、MeVガンマ線望遠鏡 ETCCの天体撮像能力を実証する。7月までに、去年度取得したRIを使用した地上実験のデータの精密解析を行い、ETCCのPSFと有効面積の評価を行う。特に高エネルギー電子イベントをシンチレータとTPCでともに測定することはETCCにおいて初の試みであるため、詳細に解析を行う。7月に開催される国際会議COSPARにて地上実験のSMILE-2+ ETCCの性能とフライトデータをまとめて発表する。 8月以降はSMILE-2+フライト観測データにおいて、点源であるかに星雲の解析を行う。同エネルギー帯域でかに星雲を観測しているCOMPTELとINTEGRALの結果と比較しつつ、ETCCの天体撮像能力や雑音除去能力を評価する。 SMILE-2+実験と地上実験により求まった有効面積とPSFをもとに、長期気球実験により26Al銀河面イメージングをするにあたり、必要な観測時間とETCC改良について計算し提案する。以上の内容をまとめて博士論文とする。
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