研究課題/領域番号 |
16J08627
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤嶺 政仁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ジェットノイズ / 音源可視化 / 条件付抽出解析 / 音響波発生機構 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,超音速衝突噴流とよばれる流れ(固体壁面へ衝突する超音速の流れ)から非常に強い音が発生するメカニズムを実験的に明らかにすることである.この音は,ロケット打上げ時に問題となる騒音振動の主要因の一つであり,その低減手法確立に本研究の理解が役立つと期待される.本年度は,最も単純な固体壁面である斜め平板を用いて,その位置や角度による音の生じ方の違いを調べて音の発生メカニズムを探ることを計画し,次の研究実績を得た. 1. 音の生じ方を詳しく観察するための「シュリーレン可視化動画の条件付抽出解析」という計測・解析手法を提案する論文を国際論文誌に投稿し,査読を経て掲載に至った.本手法では,マイクロホンでの計測が難しい音源付近を光学的に可視化・動画撮影し,その動画に埋もれた「流れから音が間欠的に発生する様子」を抽出する.この論文は,本手法を用いて音源等についての議論を進める上での基礎として重要である. 2.前項の抽出結果と「音響インテンシティベクトル」とよばれるデータを組み合わせることで,これまで「流れと斜め平板の衝突によって新たに生じた音」だと考えられていた音に,流れに対する斜め平板の位置によっては「衝突前の流れから発生して斜め平板で反射された音」も含まれることが明らかになった.これら二種類の音は極めて近接した領域に現れるため,従来のマイクロホン計測では明らかにされていなかった.このため本成果は,音の生じ方についての新たな理解を得たという点で意義がある.また同様の状況はロケットの上昇に伴って起こるため,実用上でも重要な知見である. 3. さらに,斜め平板の角度によって「流れと斜め平板の衝突によって新たに生じた音」の特徴が大きく変化することも観察した.この違いを流れ場の変化と比較することによって,衝突による音の発生メカニズムの議論に寄与する可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通りに,提案手法(シュリーレン可視化動画の条件付抽出解析)を用いて,単純な超音速衝突噴流について斜め平板の位置と角度を変えた実験計測を実施し,特に斜め平板の位置の影響に関して新たな理解を得た(研究実績の概要,項目2).一方で斜め平板の角度の影響は当初の想定よりも複雑であることが実験結果から明らかになったため(研究実績の概要,項目3),その変化をもたらす音の発生メカニズムについてさらなる議論の可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では,本年度に音の発生メカニズムを特定し,来年度にそのメカニズムが幅広い条件で妥当かどうかを,衝突板の形状を変化させることなどによって検証する予定であった.一方で本年度の実験結果からは,斜め平板の角度の影響をより詳細に議論することが,音の発生メカニズムのさらなる理解に役立つ可能性が示唆された.そこで今後の研究の推進方針として,まず斜め平板の角度による音の生じ方の変化,及び流れ場の変化との関係を詳しく調べて音の発生メカニズムを探ることに取り組み,それを踏まえて検証の条件を選ぶこととする.
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