研究課題/領域番号 |
16J08669
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
齋藤 孝成 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | グラファイト / 歪センサ / 生体情報モニタリング / ヒューマンマシンインターフェース |
研究実績の概要 |
本研究では、高い柔軟性を持ち、容易に加工が可能な人造の黒鉛シートである、熱分解グラファイトシート(PGS)を材料とした歪変位センサを用いて、低コストで高性能な生体情報モニタリングデバイスを開発する。はじめに、歪変位センサの感度・耐久性の向上を目指し、歪センサの設計について検討を行う。次に、作製した歪センサを用いて、脈波や顔の表情、人体の関節動作、呼吸などの生体情報の検出が可能な生体情報モニタリングデバイスを開発する。これらから、生体情報モニタリングデバイスを用いて得られた歪センサ抵抗値の波形データの解析を行い、人体動作のバーチャル映像化や健康度・精神状態の数値化が可能な、Real Time Healthマネンジメントシステムの実現を目指す。 今年度(平成28年度)の検討では、歪変位センサの高性能化を行い、人造黒鉛シートによる歪センサを貼付したデータグローブを作製し、3自由度マニピュレータを制御した。これより、歪センサを用いたデータグローブは、手指の動きに連動して直観的に機械を制御するヒューマンマシンインターフェースとしての応用が可能であることが明らかになった。今後は、歪センサを用いたデータグローブで記録された生体情報を機械学習により処理し、人体の動作予測システムの作製や、長期的な人体周期活動データの測定を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①人造黒鉛シートを用いた歪センサの電気的特性の検討 はじめに、膜厚25umの人造黒鉛シートを柔軟な絶縁基板上に貼付し、銀電極を形成して歪センサを作製した。歪センサの特性評価には、0度から100度の曲げ伸ばし動作を0.5 Hzで500サイクル実行した。センサの抵抗変化特性は、0度(曲げ無し)の状態の抵抗値を基準として、センサを40度に曲げた際の抵抗変化率が230%、90度に曲げた際の抵抗変化率が 811%であった。これより、歪センサがより大きく歪んだ際に抵抗変化率は大きくなり、また、歪センサは角度の変化に追随して抵抗変化を起こすことが確認された。 ②人造黒鉛シート型歪センサを用いたデータグローブの作製 歪センサをゴムおよび布製グローブの関節部分に貼り付け、2種類のデータグローブを作製した。データグローブは歪センサの抵抗値を1/3秒毎に読み取り、Bluetoothでコンピュータと無線通信する。これより、グラファイトシート歪センサを用いたデータグローブでは、手指の曲げ角度に応じてセンサの抵抗値が変化し、歪センサが関節に密着しながら関節の曲げ動作に沿って変形していることを確認した。 ③データグローブによる3自由度マニピュレータ制御 データグローブの関節動作により、モータトルク出力制御方式とモータ回転角度制御方式の2種類のアルゴリズムを開発して3自由度マニピュレータを操作・制御した。モータトルク出力制御方式は、抵抗値変化に比例してモータ出力を決定する方式であり、手指の動作により機体の動作を制御することに成功した。モータ回転角度制御方式は、抵抗値に対して回転角度が決定され、人体の関節角度と機体の関節角度がより直観的に連動しながら動作することを確認した。これより、歪センサを用いたデータグローブは直感的なヒューマンマシンインターフェースとして人体の動きに連動した機械制御が可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の本研究で得られた成果を基に、検出する生体情報に最適な歪変位センサの設計指針を確立し、脈波や顔の表情、人体の関節動作、呼吸などの検出が可能な、生体情報モニタリングデバイスの開発を行う。また、生体情報モニタリングデバイスから得られた抵抗値の波形データと実際の生体情報を比較・解析することで、作製したモニタリングデバイスの特性評価を行う。さらに、モニタリングデバイスで観測したデータを人工知能技術により解析し、人体行動予測アルゴリズムを開発する。更に、本研究で得られた研究成果を積極的に国内外での学会や論文として発表する。
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