昨年度、Burkholderiaceae科に属する菌類内生細菌(Burkholderia-related endobacteria: BRE)保有株であったYTM39において、BREを除去することにより、未記載種と考えられるホモタリックな接合胞子形成を示すことが明らかになった。そこで、平成29年度は、本菌株の分類学的検討を行い、形態的にM. parvisporaに類似した新種M. sugadairanaとして記載した。 また、YTM39を材料とし、抗生物質(シプロフロキサシン塩酸塩)処理が、BREによる接合胞子形成の阻害作用に与える影響を調査した。抗生物質含有溶液を重層した麻の実寒天培地で接合胞子形成を誘導した結果、BRE非保有株では、抗生物質の有無に関わらず、接合胞子形成が確認された。一方、BRE保有株では、抗生物質溶液を10 ppm以上含む場合、接合胞子形成が確認された。そのため、抗生物質処理により、BRE保有株における接合胞子形成阻害作用が生じなくなることが示された。 さらに、ヘテロタリックであるM. parvisporaの接合胞子形成にBREが影響を与えるかを調査した。供試菌株として、M. parvispora CBS 316.61(交配型-株)と系統的に近縁であり、交配型+株であったBRE保有株2菌株(E1425およびE2010)およびBRE非検出株1菌株(E1439)の3菌株を用いた。BRE保有株2菌株については、抗生物質処理により、非保有株を作成した。BRE保有株、非保有株および非検出株を用いて、交配試験を行った結果、BRE非検出株E1439では、接合胞子の形成が確認された。一方、BRE保有株のうち、YTM39に内生するBREと系統的に比較的近縁なBREが内生しているE2010では、E2010のBRE非保有株と比較すると接合胞子が形成されない傾向が確認された。
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