研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード触媒は,白金(Pt)使用量を低減するために従来のPt触媒からPt合金触媒への代替が求められている.しかしながら,PEFCの起動・停止のような高負荷環境においては,Ptおよび合金添加元素(M)の双方の溶解による触媒の劣化が懸念されている.そこで本研究では,チャンネルフローマルチ電極法と呼ばれる溶液フロー電気化学測定を用い,Pt合金から溶解するPtおよびMを電流としてその場同時定量測定することでPt合金の溶解機構解明を行い,Pt合金の高耐久化への指針を検討した. 添加元素種としてFeおよびCuを選択し,アーク溶解により単相・多結晶体のバルク材Pt-50at% Fe, Pt-75at% Fe, Pt-25at% CuおよびPt-50at% Cuの4種類の合金試料を作製した.これらの試料に対してアルゴン脱気した25 ℃, 0.5 M硫酸中においてPEFC起動・停止負荷を模擬した電位(0.05 - 1.4 V vs. SHE)を試料に付与したところ,Ptおよび添加元素の双方が溶解することがそれぞれ電流変化として確認された.これらの電流変化からPt合金の溶解機構として,Ptの溶解により添加元素の溶解が促進されること,およびPtの溶解が起こらない場合も,Pt原子の表面拡散により添加元素の溶解が促進されることを明らかにした. Pt原子の表面拡散が抑制されると,添加元素の溶解も抑制されること.また,同組成の合金から溶解する添加元素量(FeおよびCu)を比較した場合,標準電極電位が貴なCuの方が溶解量が少なくなることが確認されており,これらの結果は高耐久性を有するPt合金を作製する際に非常に有益な情報となるものである.
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