研究課題/領域番号 |
16J08755
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
末房 佳小里 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 生体信号処理 / 脳波 / ヒューマンマシンインタフェース / ブレインマシンインタフェース |
研究実績の概要 |
本研究は,発声想像時の脳波をデコーディングすることにより,四肢の運動を必要としないインタフェース(サイレントスピーチインタフェース)の構築を目的としている.その前段階として,単純な刺激を与えた際の脳波を利用し,非同期性のインタフェースを開発した.具体的には,異なる位相と周波数で点滅する視覚的な刺激を利用し,それに対する脳応答をコマンド入力に利用した.さらに,過去に提案した脳応答識別手法を応用することでユーザのアイドル状態の識別が可能となった.提案した非同期脳コンピュータインタフェースは,先行研究と比較して有意に高い精度を達成した.この研究成果をまとめた論文を平成29年度中に,IEEE Transactions on Biomedical Engineering (Impact Factor 2016 = 3.577) に投稿し,年度内に再録が決定した. また,発声想像という複雑な問題を単純化するため,音,とくにリズムを想像した際の脳波を測定,解析した.視覚的な刺激によりリズム想像のタイミングを被験者に呈示し,3種類のリズムをそれぞれ想像させた.脳波を解析した結果,正準相関分析を利用することでチャンスレベルを超えるリズムの識別率を達成した.これにより,聴覚的な刺激を用いずリズムを想像した場合でも,想像したリズムが周期的な脳応答として観測できることがわかった.この研究成果をまとめた論文をFrontiers in Human Neuroscience (Impact Factor 2016 = 3.634) に投稿し,年度内に採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的とする脳波を用いたサイレントスピーチインタフェース (SSI) 構築の前段階として,脳マシンインタフェース (BMI) に関する研究に注力した.まとめた研究成果を論文誌 IEEE Transactions on Biomedical Engineering に投稿した.また,国際会議 IEEE EMBC 2017 にて関連研究成果を発表すると同時に,同会議において,SSIや発声想像に関する先行研究および研究動向を調査した.それらを参考に,発声想像時の脳応答を頭蓋内脳波として計測するためのシステムを,順天堂大学医学部と連携して構築を開始した.てんかん患者の方の頭蓋内に埋め込んだ電極を用いることで貴重な頭蓋内脳波を計測することができる.このシステムは,昨年度に構築した頭皮上脳波の測定システムを発展させたものである.以上のことから,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
順天堂大学医学部と連携して頭蓋内脳波測定システムの構築,および,実験パラダイムの確率をはか. 頭蓋内脳波の計測には,手術のため頭蓋内に電極を埋め込んだてんかん患者の方に協力してもらう予定である. 被験者を15名ほど募り,東京農工大学研究倫理委員会および順天堂大学研究倫理委員会の承認に基づいてインフォームドコンセントを得る. 最終年度初旬に実験データを取得し,中旬にデータを解析する予定である.
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