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2016 年度 実績報告書

光を用いた分子ナノカーボンの配列制御と機能開拓

研究課題

研究課題/領域番号 16J08767
研究機関名古屋大学

研究代表者

横山 創一  名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワードナノグラフェン / 動く発光団 / マテリアルイメージング / 自己組織化 / 分子配列 / 走査型トンネル顕微鏡
研究実績の概要

本年度は、まず一つ目の研究として、環境に応じて発光色を変えるFlexible and aromatic photoresponsive systems(FLAP)骨格の合成法の改善並びに末端官能基修飾を行った。柔軟なシクロオクタテトラエンと剛直なアセン構造を併せ持ったFLAP分子の合成は従来10ステップ以上の合成が必要なことに加えて、途中で光反応が必要であったためグラムスケールの合成が困難であった。そこで、Ni触媒による環化反応をキーステップとして行うことでFLAP前駆体を従来の半分近くのステップかつ高収率(全収率27%)で合成することに成功した。また、FLAP分子の末端構造をアルコールで修飾した後にイソシアネートと重合することにより、FLAP分子を主鎖に取り込んだポリウレアの合成にも成功した。得られたポリウレアフィルムは青色の発光を示すが、伸張することによって青緑色の発光へと迅速に変化することが判明した。これは、フィルム中でFLAP分子がV字型骨格で固定化されてアントラセン由来の青色発光示すのに対し、伸張すると平面型構造となり共役長が伸びることで発光波長が長波長シフトしたことが示唆された。この結果は、ポリマー内で絡み合った一本のポリマー鎖あたりに負担となる力学特性を評価することが可能と考えられ、マテリアルイメージング材料への応用が期待出来る。
また、二つ目の研究として有機電界効果トランジスタ(OFET)などの有機デバイスへの展開を目的とした、窒素原子がドープされたナノグラフェンの合成にも取り組んだ。窒素原子がドープされたペリレンモノマーの合成に加えて、長鎖アルキル基を導入することに成功した。この分子はHOPG基盤上でストライプ上の配列を形成することが判明し、隣あった分子同士でアルキル鎖が相互作用することで安定な配列を形成していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

両端から引っ張るとコンフォメーション変化を誘起して発光色が変化するFLAP分子を対象となる物質の狙った位置に配置して張力プローブとして働かせることで、高分子材料中の単分子レベルにおける応力や細胞中の微弱な応力を可視化することができる。そういった観点からFLAP分子末端の官能基変換に取り組んだ結果、エステル、アミン、アルコールといったほぼあらゆる官能基を導入することに成功した。結果、ポリウレタン主鎖へのFLAP分子の導入、バイオイメージングを目的とした水溶性のFLAPや糖鎖を修飾したFLAPの開発も可能となり、当初予定していた以上の進展が得られた。また、イメージング材料への研究を行う上で、目的とする化合物を多く合成できることは研究を進めていく上でも工業的に利用する上でも重要である。この点においても、合成スキームを大幅に改善することで短期間かつ大量にFLAP分子を合成することを可能にした。結果、現在までの研究に大きな進捗が得られたことに加え、今後の研究をより効率的に進めていくことが可能になったためである。

今後の研究の推進方策

1つ目の研究に関しては、研究実績の概要でも述べたように末端に様々な置換基を導入することが可能になった。FLAP分子は微弱な応力の可視化が可能になると期待されているため、周辺修飾を行うことで様々な分野への応用も期待される。そこで、ポリマー内の応力の可視化だけでなく、生体内での微弱な応力測定するため、細胞内へのFLAP分子の導入も検討していく予定である。
2つ目の研究に関しては、現在モノマー合成の段階に留まっている。今後はダイマー構造の合成ならびにポリマーの合成を行い、溶液中や固体中における光学・電気化学測定を行い物性を行う。また、有機半導体特性などの評価を行いの有機デバイスへの展開もおこなっていく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [国際共同研究] マサチューセッツ工科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      マサチューセッツ工科大学
  • [雑誌論文] Aggregation of 4,8,12-Triazatriangulene Cation with Amphiphilic Side Chains: Emission Properties in Solution, in Aggregates, and in the Solid State2016

    • 著者名/発表者名
      Takashi Hirose, Kengo Sasatsuki, Hiromu Noguchi, Soichi Yokoyama, Kenji Matsuda
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 45 ページ: 1090-1092

    • DOI

      10.1246/cl.160453

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluorescence behavior of 2,6,10‐trisubstituted 4,8,12‐triazatriangulene cations in solution and in the solid state2016

    • 著者名/発表者名
      Hiromu Noguchi, Takashi Hirose, Soichi Yokoyama, Kenji Matsuda
    • 雑誌名

      CrystEngComm

      巻: 18 ページ: 7377-7383

    • DOI

      10.1039/C6CE00703A

    • 査読あり
  • [学会発表] 2,6,10-三置換トリアザトリアンギュレン(TATA)カチオン誘導体の溶液・固体中での発光特性2017

    • 著者名/発表者名
      野口 拡、横山 創一、廣瀬 崇至、松田 建児
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] 張力プローブ分子群FLAPを基軸とした発光分子力学の開拓研究2017

    • 著者名/発表者名
      齊藤 尚平、横山 創一、小谷 亮太、山角 拓也、櫛田 亜希、LIU Pengpeng、中池 由美、大須賀 篤弘
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] 発光張力プローブFLAPのライブラリー化に向けた化学修飾2017

    • 著者名/発表者名
      小谷 亮太、横山 創一、齊藤 尚平、大須賀 篤弘
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] 動く発光団FLAPの化学修飾とメカノ応答発光フィルムの開発2016

    • 著者名/発表者名
      小谷 亮太、横山 創一、阿部 博弥、藪 浩、齊藤 尚平、大須賀 篤弘
    • 学会等名
      第 27 回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      広島国際会議場
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] 2,6,10-三置換トリアザトリアンギュレン(TATA)カチオン誘導体の発光特性とその置換基依存性2016

    • 著者名/発表者名
      野口 拡、横山 創一、廣瀬 崇至、松田 建児
    • 学会等名
      第 27 回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      広島国際会議場
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-21  

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