本研究は,発想の転換を必要とする問題解決(洞察問題解決)の無意識的過程を明らかにすることを目的とした。当該年度は,一つの実験を行なった。実験の目的は,洞察問題解決で無意識的に呈示した手がかりの利用が,記憶の検索によって妨げられるか明らかにするものであった。実験の結果,「目に見えなかったが手がかりを思い出そうとした」と答えた参加者は,手がかりを活用することができなかった。むしろ,そうした人に手がかりを呈示すると洞察問題のパフォーマンスが低下することが,わかった。このことは,意識的な記憶の検索が内部の無意識的に生み出されるアイデアの生成を抑制してしまうことを示唆している。これを検索誘導性インパス仮説と名づけた。これまで行なった研究の成果と本年度に行われた実験を,博士論文としてまとめ,公表した。 また,洞察問題の開発に関する論文が公表された。洞察問題として,遠隔連想課題と呼ばれる課題が用いられる。この課題は,もともと日本語版が存在した。しかし,これまでの課題は,洞察の特徴を反映できていない問題もあった。そこで,より洞察問題の特徴(Aha体験,固着の存在)を意識して作成した日本語版遠隔連想課題を作成した。
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