平成30年度の研究では、博士論文を踏まえつつ三年間の研究課題の成果を取り入れた論考を発表すべく、岩波書店との間で書籍化の計画を進め、原稿を完成させたうえでさらなる研究の継続に努めた。大部の著作であるがゆえ、小規模な研究であることを要請される学会発表や論文投稿は、依頼されたものを研究課題とうまく組み合わせながら1回ずつこなしたに過ぎなかったが、出版されて世に残る著作の質が少しでも高いものになるよう、今年度も引き続き努力を重ねた。具体的には、博士論文の中でもストア派や中世哲学、クラインの精神分析理論への言及に比してやや隙のあるライプニッツ研究とラカン研究の部分に注力し、博士論文執筆の際には時間的制約からどうしても手が出し切れなかった領域にまで研究の手を広げていった。前者のライプニッツ研究に関しては、ラッセル・クーチュラ・カッシーラーに始まり、ドゥルーズの師の世代に属すゲルーやベラヴァルを経て、フィシャンやガーバーら近年の研究者に至るライプニッツ研究の変遷の中でドゥルーズのライプニッツ解釈を位置づけ、後者のラカン研究に関しては、セミネール5巻『無意識の形成物』からセミネール11巻『精神分析の四基本概念』までの内容をあらためて研究し、既述の議論をより豊かなものにすることを目指した。その後、日本学術振興会の研究成果公開費(学術図書)の申請が採択され、原稿も完成しているので、ついに平成31年の夏か秋あたりに、著作を出版する予定である。
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