研究課題/領域番号 |
16J08843
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩佐 亮明 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
キーワード | 相対的代数的K群 / ホモロジープロ安定性 / Chern類 / モチヴィックコホモロジー / モデュラス理論 |
研究実績の概要 |
(1) 代数的K理論において、Suslinのホモロジー安定性は基本的かつ重要な定理である。ホモロジー安定性とは、環Aのn次一般線形群を考えたときに、その整形数ホモロジーが行列のサイズnが十分大きければnに依らないというものである。Suslinの安定性においては、環Aは単位的であることが本質的である。本研究では、代数的K群のプロシステムを研究することを動機に、非単位的な環の一般線形群のホモロジーのプロシステムを考え、これの安定性について研究した。結果として得られた定理は、Suslinの安定性を非単位的な環を含める形で一般化するものとなった。またこれを用いて相対的代数K群を具体的に書くことにも成功した。これらの結果はシドニー及び東京での国際研究集会でも発表した。 (2) 代数的多様体のモチーフ理論は滑らかな多様体に関しては、基本的な枠組みは確立されたと言ってもいいであろう。モチーフ理論を代数多様体とその効果的Cartier因子の組み(これをモデュラスペアという)に拡張する取り組みは近年盛んに研究されている。Binda-斎藤によって、モデュラスペアのモチヴィックコホモロジーが定義されたが、これを代数的K群と比較することは、この分野での大きな一つの課題であり、本研究の目標でもある。本年度は、モデュラスペアの(相対的)代数的K群からそのモチヴィックコホモロジーにチャーン類写像を構成することに成功した。これを元に、この両者が比較されることが期待されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究の大きな目標としてあげていたものは、(1)ホモロジープロ安定性の証明と(2)相対的K群から相対的モチヴィックコホモロジーへのChern類の構成の二点であった。この二点の研究を完成させることができ、論文を公開することができた。また国際研究集会でも発表し、専門家からの高評価も得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究において、相対的K群から相対的モチヴィックコホモロジーへのChern類を構成することができた。これを元に、両者を比較することが本研究の最終目標である。現在考えているアプローチは、モデュラス付きChow群から相対的K群(ゼロ次K群)にサイクル写像を構成する、というものである。ゼロ次相対的K群の具体表示を示し、それを用いてモデュラス付きサイクルから具体的にK群の元を構成する試みをしている。またこのサイクルが全射であることを直接示すことも可能であると考えている。更にこのサイクル写像のdescent問題を解けば、相対的モチヴィックコホモロジーから相対的K群への全射写像ができることになる。最後にChern指標を用いて同型性が示されることが期待される。
|