研究実績の概要 |
容易に調製可能な(2E)-γ,γ-dichloro-α,β-enoateに対して低次有機銅試薬を用いた場合では、C5位不斉中心に起因する1,4-遠隔不斉誘起によるジアステレオ選択的なアリル位アルキル化反応が進行し、(L,D)型の立体配座に相当するクロロアルケン型ジペプチドイソスター(CADI) (Bus-L-Xaa-ψ[(Z)-CCl=CH]-D-Yaa-OEt)が高収率、高立体選択的に得られた。また、グリーンケミストリーの観点から、本反応に使用する銅塩量の検討を行ったところ、30 mol%まで減量化しても収率・選択性を損なうことなく進行することを見出した。 さらに、本反応の1,4-遠隔不斉誘起の知見をもとに、基質を幾何異性体となるE型((2E)-γ,γ-dichloro-α,β-enoate)からZ型((2Z)-γ,γ-dichloro-α,β-enoate)へ換えることで、ジアステレオマーの(L,L)型CADI(Bus-L-Xaa-ψ[(Z)-CCl=CH]-L-Yaa-OEt)を高収率・高立体選択的に合成でき、E型の基質と同様の収率、立体選択性、基質一般性を示すことも明らかにした。本反応は銅塩を140 mol%まで減らしても高収率、高立体選択的に進行することも見出した。 合成したCADIはペプチド合成へ適用可能なBoc保護- またはFmoc保護-カルボン酸(Boc-L-Xaa-ψ[(Z)-CCl=CH]-L-Yaa-OH,Fmoc-L-Xaa-ψ[(Z)-CCl=CH]-L-Yaa-OH)のジペプチドイソスターへ短工程かつ高収率にて誘導でき、現在までにFmoc-固相合成法を活用した実践的なペプチド合成への応用も可能であることを明らかととしている。
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