将来の高速情報処理や低消費電力社会に貢献することが本研究の目的である。そのために、強磁性体における電子構造や磁化のフェムト秒からピコ秒レベルでの高速制御という、低消費電力の高速動作スピントロニクスデバイスを実現する上で不可欠な極めて重要な課題に取り組んだ。当該年度の成果として、半導体と非常に整合性が良く将来のスピントロニクス材料として注目されている強磁性半導体GaMnAsに対して、テラヘルツパルス光を用いてピコ秒超短パルス光をGaMnAsに照射し、それに磁化を追従させることによるコヒーレント磁化制御の実験を行った。その結果、ピコ秒磁化制御に成功し、誘電率テンソル解析に基づき、実験結果から面直磁化の応答を定量的に示した。この結果が磁性金属に対する先行研究のモデルでは説明できないことを示し、詳細な測定からテラヘルツ光の電界成分が非常に重要な役割を果たしていることを明らかにした。テラヘルツパルス光による磁化の高速変調への応用性を考える上で、磁化変調量を増大させることは極めて重要である。テラヘルツ光の電界の試料への吸収量を減らすために、サイズの小さい強磁性ナノMnAs微粒子にテラヘルツパルス光を照射した。その結果、20%程度の大きな磁化変調を得ることに成功した。このように、当該年度、テラヘルツパルスを用いた高速磁化制御とその原理の解明、大きな磁化変調の実証を行い、将来の不揮発性高速メモリ実現に向けて研究が進展したと考えている。
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