研究課題/領域番号 |
16J09029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
悪原 成見 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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キーワード | ムスク / 遺伝子多型 / 嗅覚受容体 / ヒト / 官能試験 / 順応 |
研究実績の概要 |
平成30年3月から8月までの6か月間研究を中断したため、平成30年9月以降の研究実績を示す。 昨年度から引き続き行っているムスクの香りの受容体の遺伝型と匂いの感じ方の関連を示すテーマについては、追加実験並びに解析を行い、投稿論文の執筆を進めている。同じく昨年度から進めていたマウスのムスコン受容体の内在性リガンドに関する研究は、ライフスタイルの変化に伴い、コントロールしやすい実験系での活性検定を試みたが、思うような結果が得られずペンディングとなった。 一方、採用再開後新たに始めたテーマとして、匂いの順応の受容体レベルでの解析がある。同じ匂いを嗅ぎ続けているとその匂いの知覚が鈍くなる「匂いの順応」現象が知られており、中には同一の匂い物質だけでなく、異なる匂い物質間で順応が起こる「交差順応」もまた、匂いにまつわる神秘的な現象として古くから知られていた。交差順応を起こす匂い物質は、共通した受容体によって認識される、すなわちそれらの匂い物質の受容体が脱感作することにより起こるとされるが、実際にそのメカニズムを示した例はなかった。そこで本研究では、経験的に順応しやすいことが知られており、組み合わせによっては交差順応が起こるムスク香料に着目した。ムスクの受容体は応答性が限定的であるため、受容体の脱感作現象を検証しやすい。 前任者により官能試験で交差順応を引き起こすムスク香料の組み合わせが示され、それらの匂い物質が、共通するヒトムスク受容体OR5AN1を発現させた培養細胞において脱感作を起こすことを示した。 また、かねてより申請していたムスクの香りのスクリーニング方法の特許が発行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6か月間の中断期間を挟んだものの、国際誌への論文の投稿に向けたデータが得られており、執筆と解析を並行して進めている。さらに、復帰後新たに着手したテーマにおいてトップデータとなるような結果が得られてきている。 一方で、それまで行っていた実験の中には時間的制約からできなくなったものもあり、ペンディングとなったテーマもある。
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今後の研究の推進方策 |
ムスクの香りの受容体の遺伝型と匂いの感じ方の関連については、論文投稿に向けて、解析の足りない部分を補強する。本文の執筆を急ぐ。 匂いの順応の受容体レベルでの解析については、論文としてまとめることを視野に入れ、より詳細な実験を行う。培養細胞の実験において、脱感作の起こりやすさは必ずしも官能試験の結果と相関しているわけではなく、さらなる考察と検証実験が必要とされる。
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