研究課題/領域番号 |
16J09066
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小西 義延 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ライブイメージング |
研究実績の概要 |
新規FRETマウスの作出と評価 セリンスレオニンキナーゼの1つ、ERKの分子活性をモニターするFRETバイオセンサーを血液細胞に必要十分量発現するマウスの作出がH28年度の主な進捗であった。Rosa26領域にERKのバイオセンサー(EKAREV)を導入することで得られたマウスは、Rosa26_lox_Eisukeと命名された。T細胞特異的にEKAREVを発現させる目的でLck-Creマウスと交配し目的とする仔を得た(Rosa26_lck_Eisukeと呼称)。得られた個体において、①EKAREVがT細胞特異的に発現すること(末梢血、胸腺、脾臓、リンパ節)、②in vivoの生体ライブイメージング条件下で抗CD3抗体投与によりERK活性が上昇する様子を捉えられること(リンパ節)、を確認した。 2光子顕微鏡による胸腺細胞ライブイメージング 上記Rosa26-lck-Eisukeマウスを用いて、全身のリンパ組織を対象に生体イメージング解析を行った。脾臓、リンパ節、腸管リンパ組織は生きたマウスを麻酔下に、胸腺についてはin vivoおよびex vivo双方の実験系を用いて観察した。その過程で、胸腺皮質内の胸腺細胞において組織内を動き回る細胞は皆ERK活性が低いことを見出した。この観察所見に基づき、ERK活性化が胸腺細胞の運動速度を抑制する働きをもつ、との仮説を立てた。この仮説を検証すべく、MEK阻害剤処置の影響を評価した。胸腺細胞に限定してMEK阻害剤の影響を与えるべく、事前にFACSで単離した胸腺細胞を、ビブラトームで作製した胸腺スライス上に戻すことで再度胸腺組織内における運動を評価できる系を利用した。その結果、MEK阻害剤処理を加えると胸腺細胞の運動速度が著しく速くなることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度における研究の進捗は期待以上の進展がありました。Gatewayシステムを活用しRosa26領域へ遺伝子導入をすることによって,生体内でリンパ球のERK分子活性を可視化する新規ツールの開発に成功しました。さらに,新規ツールの妥当性を検証する過程で,胸腺において運動速度が速い細胞はERK活性が低いという事象に気づきました。特筆すべきことは,所属研究室に胸腺のT細胞分化に関する研究の蓄積がほとんどなかったにもかかわらず,積極的に他施設の先生方と共同研究をセットアップし,研究を進展させた点です。例えば,胸腺スライスのイメージング技術については木梨先生(関西医科大学教授)のもとで技術を習得してきました。また,胸腺研究の第一人者であるである濱崎先生(iPS細胞研究所教授)とデータについて頻回にディスカッションを行い,研究テーマを深めていっています。
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今後の研究の推進方策 |
CD4シングルポジティブ胸腺細胞に限定して認められるERK活性と運動速度との負の相関 個々の細胞レベルでERK活性の変動と運動速度の変動との間に相関関係がないかを確認した。その結果、CD4シングルポジティブ胸腺細胞においてのみ、ダブルポジティブやCD8シングルポジティブには認められないERK活性と運動速度との間の負の相関が見出された。今後は、CD4シングルポジティブにおいてERK活性の変動をもたらす因子について検討する。更に、この変動がCD4ないしCD8シングルポジティブの分化誘導・維持(コミットメント)に寄与するかどうかについて検討を加えていくことを計画している。
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