研究課題
ERKマップキナーゼは細胞膜の情報を感知し、細胞の増殖、分化、運動などを制御する。胸腺細胞の分化成熟に、適切な運動制御およびERK活性がそれぞれ必須であることが知られていた。しかし、これまで組織内の単一細胞についてERK活性の経時変化の評価は困難であったため、胸腺細胞の運動制御にERK活性が関与するのかどうか不明であった。この問題を克服するために、申請者はERK活性を経時的に可視化できるFRETバイオセンサーの発現ユニットをROSA26遺伝子座へ導入した新規マウスを作出した。その結果、従来は観察困難であった組織胸腺細胞のFRETイメージングが可能となった。この技術により、組織から単離した胸腺細胞を用いては観察できない、DP細胞とCD4-SPあるいはCD8-SP細胞間のERK活性の差を発見した。更に、ERK活性が胸腺細胞の運動を抑制すること、その抑制様式がサブセット間で異なることを見出した。特にCD4-SP細胞ではTCRとMHCクラスII分子を介した細胞間相互作用がERK活性に動的変化を生み、結果として細胞運動を抑制することを明らかにした。ERK活性化による運動抑制がTCRを介した抗原認識に貢献し、正常なT細胞の産生へ寄与することが示唆された。以上の研究は、胸腺細胞の運動制御に関するERK活性動態の機能解明に貢献し、胸腺細胞の運動制御分子メカニズムの理解に寄与するものと考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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iScience
巻: 10 ページ: 98-113
https://doi.org/10.1016/j.isci.2018.11.025