報告者の研究課題は「英語教育の政策過程とその影響要因に関する包括的研究」であった。本研究の目的は,日本における英語教育の政策過程の構造とその変容を巨視的・微視的視点から明らかにすること、および諸外国との比較等を通して英語教育政策の処方・規範を確立することであった。日本の英語教育政策に関する先行研究は、他の政策領域に比べて対象やアプローチの点で立ち遅れている。先行研究の主な対象は政策の内容に偏っており、構造を含む過程に関する視点を欠いていた。同様に、主なアプローチは政策そのものに対する分析が不十分な規範的研究であった。それに対し,政策そのものに対する詳細な実証的研究に基づく本研究は,先行研究の諸課題を一部克服することができたと言える。 以上を受け,報告者は研究課題に次の3つの下位項目を作成した。①政策と学術界や教育現場との関係,②微視的な政策過程,③英語教育政策の理論的検討。 研究課題 ①においては,関連分野の学術界において英語教育改政策の中核をなす諸概念がどのように議論されてきたのかを分析することがその中心であった。本研究課題では,政府の英語教育政策に見られる主要な概念である「コミュニケーション」等に着目し,その用語法が日本の学術界においてどのように確立されてきたのかを検討した。 研究課題 ②においては,教育委員会への質問紙調査・聞き取り調査に基づいて,全国に特定の英語教育政策が波及していく政策過程を微視的に分析した。本研究課題で設定した主な調査項目としては,小学校における英語教育,教育振興基本計画における英語教育に関する成果指標,英語教員のシェア,外国語指導助手の雇用,その他予算についてであった。 研究課題 ③においては,上記の研究課題や他国に関する調査を踏まえて,公共政策学や行政学等において培われてきた政策分析のための理論モデルを英語教育政策に適用した。
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