クロマチンを構成するヒストンは様々な翻訳後修飾を受け、エピジェネティックな転写調節メカニズムに重要な役割を果たし、近年多くの関連分子群の機能が明らかにされてきた。Nrd1はナルディライジン(N-arginine dibasic convertase、Nrdc)は核内においてH3K4me2と特異的に結合し、遺伝子プロモーターやエンハンサー上で転写制御に関与し、膵β細胞機能や体温恒常性の維持に役割を果たす。本研究ではゲノムワイドなNrdcの結合領域や転写調節における普遍的役割を探求することを目的とし、野生型、Nrd1欠損、Nrd1欠損にNrd1を再導入した不死化したマウス線維芽細胞を用い、ChIP-seqとRNA-seqによる統合的な解析を行った。その結果、Nrd1が直接標的とする遺伝子を同定し、それらに細胞周期に関連する遺伝子群が多く存在することを示した。またNrd1非存在下では遺伝子発現と一致してH3K9acレベルが低下することが分かり、かつ細胞増殖及び複数の細胞周期が遅延することを示した。以上のことから、Nrd1はエピジェネティックなヒストン修飾と転写制御を介して、細胞増殖や細胞周期を調節していることが明らかになった。
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