本年度は GroundBIRD 望遠鏡の運用開始に向けた開発や試験を主に行った。以下、具体的な内容について項目に分けて記述する。 【1.望遠鏡の光学試験】 望遠鏡の回転架台が完成したため、実際にそれを用いて望遠鏡の光学試験を行った。焦点面にオランダ宇宙研究所(SRON)にて作成された超伝導検出器を設置し、それを用いて、水銀灯を用いたビーム測定や液体窒素を用いた光学結合測定を行った。これらの測定によって望遠鏡の性能を確認したのち、実際の観測地であるカナリア諸島への輸送を開始した。 【2. 仰角測定用エンコーダの読み出し回路作成】 望遠鏡架台が完成したため、その傾きを知るための仰角エンコーダの読み出し回路開発に着手した。架台はインクリメンタル型エンコーダを据え付けることができるように設計されているが、その読み出し機構に関しては用意されていなかった。また、市販の読み出し回路では下記のシンクロ機能を実装することが難しいため、回路を自作することにした。 【3. 望遠鏡上下の同期回路】 GroundBIRD 望遠鏡の上部は回転し、下部は地面に対して静止している。検出器のデータ取得回路と上述の仰角エンコーダ回路は上部に据え付けられて望遠鏡と一緒に回転し、下部には方位角の方向を記録するエンコーダ回路が置かれている。そのため、上部と下部を同期させる仕組みを開発した。望遠鏡上部の電子機器は水銀を用いた回転継手によって電力供給しているが、その継手を利用して下部から上部にパルスを送ることで、同期を実現することにした。 【4. 現地での準備】 2018年11月より、望遠鏡設置予定のスペイン領テネリフェ島にあるカナリア天体物理研究所に滞在し、日本から送られてくる望遠鏡の受け入れ準備を行った。また、現地研究者と協力して、天体を用いた望遠鏡のキャリブレーションについて検討を進めた。
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