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2017 年度 実績報告書

高圧キセノンガスを用いたニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索

研究課題

研究課題/領域番号 16J09462
研究機関京都大学

研究代表者

潘 晟  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワードニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊 / 高圧キセノンガス / TPC
研究実績の概要

高圧キセノンガスを用いたTPC開発の基礎原理確立を目的として、φ10cm×9cm程度の小型 の試作TPCを開発し、性能評価を行った。開発した試作検出器の運用の際、圧力容器に封入するキセノンガスの純度が悪く、信号量が減衰することが問題となっていた。私はキセノンガス系統の循環、純化設備を整え、ガス純度の向上に貢献した。その結果、光量の増加および安定化に成功した。
また、開発した検出器は数十kVもの高電圧を圧力容器内部で用いるが、放電が度々起こり、まともに測定が出来ない状況となりつつあった。そこが私は検出器を構成している各要素から 電源に至るまでの全てのコンポーネントを細かく調べ、問題があった箇所については適宜 対策を行う、または部品の再制作を行うことでこの問題に対処した。
2017年度の前半に上述の設備の問題点の改善に取り組んだ後、年度後半では標準ガンマ線源を用いた検出器の性能評価を行った。ガス圧を8気圧とし、350keVのエネルギーのガンマ線を放出する線源を用いた性能評価を行った。取得したデータには適切なカット、補正をかけることで良い性能の実証に成功した。これらのカットや補正については、一昨年度までの研究で確立していた手法に加えて、ガス圧やエネルギーが増加したことに起因する新しい問題にも対処できる補正などをいくつか開発し適用している。これらの解析手法の更新により、350keVのピークに対して、エネルギー分解能2.54% (FWHM) を達成した。
小型試作検出器での原理実証及び性能評価を終えた次のステージとして、φ30cm×30cm程 度の大型の試作検出器の開発も行っている。2017年度は、大型試作検出器を格納する圧力容器の設計を行い、メーカーとの綿密な打ち合わせを経て製作を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度前半は、予想外の放電に悩まされ、研究が思うようには進まなかった。放電箇所の特定とその修復を繰り返すことで地道に対応をおこなったが、中には部品の再製作を余儀なくされた箇所もあり、業者の納期の都合で1ヶ月以上新たなデータ取得が出来ない期間などもあった。しかし、これらの努力により、昨年度の7月には放電の問題は大きく改善され、新たにデータを取得することが可能な状態となった。
新たにデータを取得するにあたり、一昨年度から比べてガス圧を2倍の8気圧まで増やし、より高いエネルギー事象の性能評価を行った。このガス圧の増大および観測エネルギーの増大から、光検出器MPPCの非線形性などの新たな問題がいくつか浮上した。これらの問題に対しても、データを精査することで適宜適切なカットや補正を開発し、適用した。これらのカットや補正の開発には日々精力的に取り組み、幾度となく改良を重ねたことによって、350keVの事象に対しても良い性能を発揮することを示すことが出来た。
さらに511keVのエネルギー事象に対する性能評価を行うべく研究を行っているが、昨年度はその実施には至らなかった。
また、次期大型試作検出器の開発も進めており、昨年度は検出器を格納する圧力容器の設計、発注を行った。
これらから総合的に判断し、概ね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

引き続き小型試作検出器の性能評価を進める。特に本年度は小型試作検出器の改良を行い、より高いエネルギー(511keV)の事象に対する性能評価を行うことを目指す。このためには今まで以上に安定した高電圧供給やデータ処理が求められる。本年度の前半はこれらに注力し、小型試作検出器での性能評価を終えることを目指す。
また、次のステージとして大型の試作検出器の開発も進めていく。昨年度までの進展として、圧力容器と光検出器の準備は着々と進められてきている。しかし、検出器内部の構造体の設計や光検出器などのケーブリングについては未だ手付かずなので、本年度はこれらのトピックの開発をすすめ、大型試作検出器の完成を目指す。大型の試作検出器が完成したあとは、実際の運用に向けて解析コードなどの開発を行い、小型試作検出器では達成できないさらに高いエネルギー事象に対しての性能評価を行う。
これらの試作検出器の性能評価を終え、高いパフォーマンスを実現可能であることを実証できれば、いよいよ物理探索のための検出器開発に着手する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Electroluminescence collection cell as a readout for a high energy resolution Xenon gas TPC2017

    • 著者名/発表者名
      Ban S.、Nakamura K.D.、Hirose M.、Ichikawa A.K.、Minamino A.、Miuchi K.、Nakaya T.、Sekiya H.、Tanaka S.、Ueshima K.、Yanagita S.、Ishiyama Y.、Akiyama S.
    • 雑誌名

      Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment

      巻: 875 ページ: 185~192

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.nima.2017.09.015

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] AXEL : Neutrinoless double beta decay search with a high pressure xenon gas Time Projection Chamber2017

    • 著者名/発表者名
      Sei Ban, Atsuko K. Ichikawa, Tsuyoshi Nakaya, Akihiro Minamino, Kiseki Nakamura, Saori Yanagita, Shunsuke Tanaka, Masanori Hirose, Hiroyuki Sekiya, Kota Ueshima, Kentaro Miuchi
    • 雑誌名

      Journal of Physics Conference Series

      巻: 888 ページ: 012233-012233

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 高圧XeガスTPC AXELの小型試作機の高いエネルギー事象(500keV)に対する応答理解2017

    • 著者名/発表者名
      潘晟, 市川温子, 中家剛, 南野彰宏, 中村輝石, 田中駿祐, 吉田将, 中村和広, 廣瀬昌憲, 関谷洋之, 中島康博, 上島考太, 身内賢太朗
    • 学会等名
      日本物理学会 第73回年次大会
  • [学会発表] 高圧XeガスTPC AXELの小型試作機の152Euと22Naガンマ線源を用いた性能評価2017

    • 著者名/発表者名
      潘晟, 市川温子, 中家剛, 南野彰宏, 中村輝石, 田中駿祐, 吉田将, 中村和広, 廣瀬昌憲, 関谷洋之, 中島康博, 上島考太, 身内賢太朗
    • 学会等名
      日本物理学会 2017年秋期大会

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公開日: 2018-12-17  

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