研究課題/領域番号 |
16J09521
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
市川 賀康 東京理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 非点収差PTV / 界面近傍流動計測 / 壁面せん断応力計測 / 抵抗低減 / 超撥水壁面 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
当該年度では,(1)壁面せん断応力分布定量化手法の確立,(2)超撥水壁面近傍流動計測について取り組んだ. (1)壁面せん断応力分布定量化手法の確立 当該年度では,単視野3次元3成分流速計測法(APTV)によって取得した壁面近傍流速から壁面せん断応力を分布として定量化する方法について取り組んだ.せん断応力の定量化にあたり,壁面近傍にトレーサ粒子径に由来する系統誤差が生じることや,速度勾配算出の際に壁面位置に関する正確な情報取得が困難となることが課題として挙げられていた.そこで,壁面近傍流速の計測結果をベースに系統誤差を考慮した流速分布モデルを作成し,このモデルを使用しながら,正確な壁面位置情報が不要で,流路中のトレーサ粒子の相対位置及び分布のみから速度勾配を決定可能な方法を検討した.その結果,壁面最近傍に位置する粒子から粒子径の3倍以上離れた位置の流速を使用すれば,壁面位置が不明でも精度良く速度勾配が決定可能であることを示した.また,実際にマイクロ流路壁面のせん断応力分布を計測し,併せて数値計算結果との比較を行って,検討した手法の有効性を確認した. (2)超撥水壁面近傍流動計測 流れ方向に対して平行なリブ及び溝構造を有し,撥水加工を施された超撥水壁面を使用して,APTVによって溝部に形成される気液界面近傍流動計測を試みた.その結果,流路断面の流速成分分布から気液界面の形状及び界面におけるすべり長さを取得した.そして,気液界面流動からせん断応力の算出を行い,界面の摩擦抵抗を評価したところ,理論値に対して実験値が低下していることを確認し,使用した超撥水壁面が流動抵抗低減効果を有していることを確認した.また,APTVを使用した気液界面近傍流動の直接計測が,超撥水壁面が有する抵抗低減効果の評価に使用可能ということを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず壁面せん断応力分布の定量化手法に関しては,正確な壁面位置が不明でも壁面せん断応力決定可能な方法を構築しており,実際にマイクロ流路における壁面せん断応力分布計測を実施して構築した方法の有効性を確認した.そのため,当初予定していた計画を全て遂行している. また,超撥水壁面近傍流動計測に関しても,APTVによって壁面近傍で形成される気液界面近傍の流動を3次元的に計測することに成功しており,その界面近傍流動からすべり長さや界面形状の抽出が可能であることを示した.取得した界面近傍流動から界面に働くせん断応力分布を定量化することで,気液界面に働く流動抵抗を定量化可能であることが明らかしている.そのため,当初予定していた気液界面近傍流動の直接計測による流動抵抗の定量化という目標をクリアしている. 以上の観点より,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
超撥水壁面における気液界面近傍流動に関して,現在までに複数の解析モデルや数値計算結果が示されているが,その多くが界面の微小な変位や界面に働くせん断応力を無視したモデリングを行っており,流動の傾向はある程度予測できるものの,超撥水壁面が有する抵抗低減効果を過剰に見積もるという問題があった.本研究課題では,現在までに単視野で3次元3成分流速計測が可能なAPTVを使用して超撥水壁面に形成される気液界面近傍流動の計測を実施しており,気液界面の形状及びその変位と,界面における流動のすべり長さを取得している.そのため,APTVによる計測結果を使用することで,気液界面流動に関する数値計算実施時の,気液界面における境界条件が設定可能であると考えられる.そこで今後は,APTVによる気液界面近傍流動の計測結果に基づいた境界条件設定の指針を示し,実際に数値計算を実施し,実験結果との比較を行いながら,境界条件設定方法を普遍的なものとすることを目指す.これにより,適切に境界条件さえ設定すれば,超撥水壁面が有する抵抗低減効果を数値計算によって適切に見積もることが可能になると考えられる. また,APTVを使用したせん断応力分布計測手法を現在までに確立させているが,先述した目標達成のためにも,高精度に気液界面に働くせん断応力の定量化が必要であるといえる.そのため,必要に応じてせん断応力算出手法の精度向上や,手法の見直し,最適化を実施していく予定である.
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