研究課題/領域番号 |
16J09552
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩瀬 和至 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 酸素還元 / 銅 / 共有結合性有機構造体 |
研究実績の概要 |
先行研究ではCu(I)が酸素還元反応を進行させると報告されてきたことから、酸素還元活性の高活性化にはCu(II/I)の酸化還元電位の静電位側へのシフトが必要である。そこで、新規に銅担持共有結合性有機構造体電極触媒を合成し、Cu(II/I)を正電位側にシフトさせることで酸素還元活性の向上を試みた。既報により、硫黄が銅イオンに配位することで、Cu(II/I)が正電位側に大きくシフトすることが知られていることから、硫黄を孔内に持つ硫黄架橋型共有結合性有機構造体を合成し、銅イオンを含浸担持して触媒を合成した。また本年は、高い酸素還元活性を持つマルチ銅酵素が活性中心に複核構造の銅イオンを有していることから、予備的検討として銅イオンの担持量、及び担持条件を検討することで、活性中心に複核の銅イオンを導入することを試みた。 本年の研究結果は大きく分けて以下の二点である。1)硫黄架橋型共有結合性有機構造体を合成し、銅イオンを担持することで、Cu(II/I)が従来の銅-窒素錯体と比較して大きく正電位側にシフトした。また、その高いCu(II/I)に伴い、酸素還元開始電位が正電位側にシフトしたことを確認した。2)複核の活性中心の構築を目的として、銅イオンの担持量、含浸担持の条件を詳細に検討したところ、銅の担持量に依存する電流電位曲線の挙動の変化が確認された。しかし、酸素還元開始電位の向上は見られなかった。今後は、有機構造体の構造の詳細な解析や、反応メカニズムの詳細について解析を行い、この銅担持硫黄架橋型共有結合性有機構造体の高活性の要因、及びさらなる高活性化のための指針を得る。また、合成条件の最適化によりさらなる高活性化を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず本年までの成果としては、硫黄を含む共有結合性有機構造体を新規に合成することで、酸素還元活性の高活性化に成功したことが挙げられる。この結果は、共有結合性有機構造体により銅イオンの電子状態を制御し、Cu(II/I)を正電位側にシフトさせたことが要因であると考えられる。また、この結果は有機構造体の構造を制御することで、金属中心の電子状態を自在に制御できることを示すものである。また、銅イオンの担持方法の検討や種々の共有結合性有機構造体合成といった、高活性化のための予備的検討も行った。以上の結果から、本年までの研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、活性が向上した試料について詳細な構造解析を行う。また、種々の分析により反応メカニズム解析を行う予定である。以上の得られた結果から、今後の有機構造体の設計指針を得て合成条件の最適化を行うことで、酸素還元活性の向上を試みる。さらに、予備的検討で得られた結果を元に、銅イオンの担持プロセスについていくつかの手法を検討することで、酸素還元活性の向上を試みる予定である。
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