研究課題/領域番号 |
16J09587
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 航平 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマノイドロボット / 搭乗型機器 / 学習制御 / オンラインシステム / バランス制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,不安定な搭乗型機器に対するヒューマノイドロボットの適応行動課題として,平行二輪電動スクーター上でのバランス安定化に付随して,搭乗した状態における速度調整のための学習制御法を確立した. 搭乗状態にあるヒューマノイドロボットの速度調整のための行動について「調速行動」という考えを新たに定義し,その制御系の構成法とオンラインでの学習制御方策による自律性をもたせたアプローチを提案した. オンラインでの学習制御方策として,制御の実行中に積分ゲインを更新する際に発生する制御入力のオーバーシュートや発散を抑制するための「前回値補正積分器」を導入し,先行研究のIFT(Iterative Feedback Tuning)に基づくPID制御の学習のためのゲインチューニングにオンライン性をもたせることで,調速行動のオンライン学習制御を実現した. オンライン学習制御の有効性をさらに拡張すべく,平坦な床面から平行二輪電動スクーターへの乗り込み動作のような短期の行動過程においても適用可能なオンライン学習制御法を新たに提案した.これにより,等身大のヒューマノイドロボットを人間がサポートして搭乗型機器に乗せる必要がなく,ヒューマノイドロボット自身が乗り込み動作を生成して搭乗する継続的な学習制御を可能とした. 最終的に,オンライン学習制御から獲得した学習結果のゲインを利用し,調速行動の制御系を速度制御として活用した平行二輪電動スクーターの運転操作行動およびロボット実機に外乱を与えた際のロバスト性の検証実験を行い,本年度に提案した調速行動の制御系とオンライン学習制御法の波及効果を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の取り組みとして,前年度で取り組んでいた三輪車の搭乗型機器の適用例から発展させ,バランスも考慮に入れる必要のある不安定な搭乗型機器として平行二輪電動スクーターに対する適応行動課題を取り上げている. 平行二輪電動スクーター上ではバランス安定化もさることながら,前年度で提起したヒューマノイドロボット自身のスピードが制御できない問題に関しても解を与える必要がある. この問題に対して「調速行動」という考えを定義し,その制御系の構成法とオンラインでの学習制御方策による自律性をもたせたアプローチを提案している. 学習制御法は従来手法であるIFT(Iterative Feedback Tuning)に基づくものであるが,制御中にIゲインを更新する際の問題を取り上げ,その問題を解く「前回値補正積分器」による積分演算処理に工夫が見られる. これにより,従来のIFTを利用したPIDチューニングの方法にオンライン実行性を与えている点が評価され得る. また,人間がサポートしてロボットを搭乗型機器に乗せるのではなく,ロボット自身の乗り込み動作生成による搭乗のプロセスを設けて継続的に学習制御を行えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,次年度の博士論文をまとめるにあたり,これまでに提案してきた手法・アプローチを共通化して統一的に扱うことのできる方法論の確立を行う. 統一的なアプローチを提案することで,具体的に平行二輪電動スクーター以外の異なる搭乗型機器に対するヒューマノイドロボットの適応行動や,シーケンシャルに搭乗動作と運転動作が実行されるオンライン学習制御法の一貫性が確立される. さらに,搭乗型機器に対するヒューマノイドロボットの降車動作についても試行的な実験を行った上で,環境認識も含めた統合的な学習制御へと発展させていくことが望ましい.
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