研究課題
平成29年度は、昨年度に構築したインスリン分泌能低下を予測する遺伝的リスクスコア(insulin secretion-genetic risk score[IS-GRS])を改良し、糖代謝指標との関連を再検討するとともに、IS-GRSと境界型糖尿病・2型糖尿病発症との関連の強さは、肥満者と非肥満者で異なるかどうかを検討した。また、IS-GRSが高い者と低い者において、境界型糖尿病・2型糖尿病発症に及ぼす肥満の影響が異なるかどうかを検討した。さらに、インスリン抵抗性を予測するinsulin resistance-GRS(IR-GRS)を構築し、糖代謝指標および境界型糖尿病・2型糖尿病発症との関連を検討した。中高齢男女946名を対象とした横断研究を実施した。インスリン分泌能に関連する20個の一塩基多型(SNP)を分析し、リスクアレルの保有数を合計してIS-GRSを求めた。同様に、インスリン抵抗性に関連する6個のSNPを分析してIR-GRSを求めた。IS-GRSと空腹時血糖値およびヘモグロビンA1cとの間に有意な正の関連が、インスリン分泌能の指標であるHOMA-βとの間に有意な負の関連が認められた。これらの関連性は、昨年度に構築した13個のSNPからなるIS-GRSと糖代謝指標との関連性より強固であった。BMIが25未満の非肥満者においては、IS-GRSと境界型糖尿病・2型糖尿病発症との間に有意な関連が認められたが、BMIが25以上の肥満者においては有意な関連は認められなかった。IS-GRSが低い者と高い者の両方において、BMIは境界型糖尿病・2型糖尿病の発症と有意に関連していた。IR-GRSとインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRおよびヘモグロビンA1cとの間に有意な正の関連が認められたが、空腹時血糖値および境界型糖尿病・2型糖尿病発症との間に有意な関連は認められなかった。
3: やや遅れている
本年度の研究により、1) インスリン分泌能低下の遺伝的リスクが境界型糖尿病・2型糖尿病発症に及ぼす影響は、特に非肥満者において強いこと、2) インスリン分泌能低下の遺伝的リスクの大小に関わらず、BMIの増加が境界型糖尿病・2型糖尿病発症リスクを高めること、3) インスリン抵抗性の遺伝的リスクは境界型糖尿病・2型糖尿病発症とは関連しないことを明らかにできたが、当初予定していた遺伝素因と生活習慣・身体特性の相互作用の解析や、縦断データの解析に着手することができなかったため。
どのような生活習慣・身体特性を有することにより、インスリン分泌能の遺伝的リスクが2型糖尿病発症に及ぼす影響が弱まるかどうかを明らかにするために、糖代謝指標および境界型糖尿病・2型糖尿病発症に対するIS-GRSと生活習慣・身体特性の相互作用の解析を、横断・縦断データの両方を用いて進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件)
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