研究課題/領域番号 |
16J09604
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
飯谷 健太 東京医科歯科大学, 大学院 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | イメージング / アセトアルデヒド / アルコール脱水素酵素 / NADH |
研究実績の概要 |
平成28年度はノネナールと同様にアルデヒド基を有し、モデル成分として選択したアセトアルデヒド(AcH) について、①飲酒後にアルコール代謝にて生成され、生体ガスに含まれるAcH を対象としたバイオ計測法の検討を行い、②AcH ガス用の可視化システムを構築した。まず、①AcH の高感度センシングを目指して2種のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)依存型脱水素酵素による測定法を検討し、アルコール脱水素酵素(ADH) の逆反応を用いることで、感度と選択性に優れる液相及び気相のAcH 用のバイオセンサを開発した。はじめにAcH 溶液測定系にてアルデヒド脱水素酵素(ALDH) の正反応およびADH の反応条件について最適化し、次に定量範囲を比較したところ、ADH 逆反応を用いることでALDH 正反応に比して広いダイナミックレンジ(ALDH: 0.025-0.2 mM→ADH: 0.001-0.5 mM) を以ってAcH の選択的測定が可能であった。また、同様に気相AcH 測定系においても定量範囲を比較した結果、気相計測においてもADH の逆反応を用いることで飲酒後の呼気中AcH 濃度 (1.2-6.0 ppm)を含む、0.02-10 ppmの濃度範囲にて定量が可能で、AcH ガスに対する高い選択性を確認した。上記結果に基づき、②ADH を用いたAcH 用の可視化システム(探嗅カメラ) を開発した。本システムではNADH を浸漬したADH 固定化メッシュを用いて、AcH ガス負荷に伴うNADH の蛍光強度変化を高感度CCD にて撮像し、AcH ガスの可視化を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、人体から定常的に放出される加齢臭成分ノネナールの濃度分布の可視化を行うための基礎検討として、アセトアルデヒド(AcH) をモデル成分とした可視化システムを開発した。ノネナールとAcHは共にアルデヒド基を有している。AcHはアルデヒド類の中でも単純な構造を有しており、飲酒により呼気および皮膚ガス中に含まれる濃度が増加することが報告されていることからモデル成分として選択した。 まず、AcHを触媒可能なNADH依存型脱水素酵素として「アルデヒド脱水素酵素(ALDH)」に加えて、「アルコール脱水素酵素(ADH)の逆反応」について比較・検討した。その結果、ADH逆反応を用いることでALDH正反応に比して広いダイナミックレンジ(ALDH: 0.025-0.2 mM→ADH: 0.001-0.5 mM)を以ってAcHの選択的測定が可能であった。 次に、AcHガスの気相計測についてADH逆反応にて検討を行った。実験の結果、気相計測においてもADHの逆反応を用いることで飲酒後の呼気中AcH濃度 (1.2-6.0 ppm)を含む、0.02-10 ppmの濃度範囲にて定量が可能で、AcHガスに対する高い選択性を確認した。次に本センサ系を呼気計測に用いたところ、呼気中AcHの計測が可能で、ALDH2の活性が異なる被験者の間にて呼気濃度を比較したところ、明確な差異を観察した。 最後に、気相および液相での結果に基づき、AcH用の探嗅カメラの開発を進めた。構築にあたりADH固定化メッシュの同軸上に「励起系」と「蛍光CCD系」を対向するように配置した。実験では、ADH固定化メッシュにNADH溶液を浸漬した後、標準AcH ガスを負荷し、蛍光強度変化を高感度CCD にて撮像した。実験の結果、負荷点を中心に蛍光強度の減少が観察され、構築した画像解析法にてAcHガス濃度変化のリアルタイムな可視化を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は人体から定常的に放出される加齢臭成分ノネナールの濃度分布の可視化計測を行うための基礎検討としてアセトアルデヒドをモデル成分とした可視化システムを開発した。その結果、アルコール脱水素酵素の逆反応を用いることでアセトアルデヒド濃度分布の可視化計測を実現できた。今年度は、開発した可視化計測システムを用いて飲酒後の呼気中および皮膚ガス中に含まれるアセトアルデヒドの可視化計測を行う。飲酒後の体内で生成されたアセトアルデヒドは絶えず代謝されることから呼気や皮膚ガス中に含まれるアセトアルデヒド濃度は代謝状況を反映し、経時的に変化すると考えられる。また、現在の光学系はその構造上、皮膚ガス濃度分布の連続計測な計測が不可能であるため新たな光学系を設計・開発する。具体的には励起光源をカメラ・レンズと一体化させ、同一方向から紫外線励起と蛍光の撮像が可能なシステムを開発し、三次元物体表面上での濃度分布変化をリアルタイムに計測する。新規な可視化システムによって得られた濃度分布情報を基にして、発汗等の影響を考慮して皮膚ガスに濃度分布が生じる原因を考察する。また、研究により得られた成果を論文にまとめ、学会発表を行う。
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