研究課題/領域番号 |
16J09640
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
TON THAT LOI 秋田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気ハイパーサーミア / ワイヤレス温度計測 / 体動アーチファクト低減 / 回転走査 / 磁性体の位置探索 / 感温磁性体 / 金コート感温磁性体 / 低キュリー温度 |
研究実績の概要 |
本研究では,手術不可能な進行癌患者のQOLの向上のための温熱化学療法に向けた低侵襲温熱治療システムの研究開発を目指している。本システムにおいて,患部に注射された感温磁性体が呼吸や拍動等により移動し,患部温度検知精度が低下するという問題があった。そこで,平成28年度ではロボットアームによる磁場印加検知ユニットを回転走査させる「体動アーチファクト低減法」を提案し,物理実験より妥当性を検証した。その後,本体動低減法で使用するスペクトル解析によって発生する遅延時間を改良するために,磁場印加コイルの中に複数の検知コイルを対称的に設置する「対称型マルチ検知コイルによる遅延時間短縮法」を考案し,数値計算に基づくシミュレーションにより妥当性を確認した。これらの成果を基にして国際会議ICEE2016で発表し,電気学会論文誌に和文の原著論文が掲載された。 加えて,本研究を進める過程において目視等では探知できない磁性体の位置を探索する手法を考案し,位置探索システムを構築して物理実験により妥当性を検証した。この成果は特許出願を完了し,電気学会論文誌に英文の原著論文として投稿(条件付採録)しており,同時に国際学会EMBC'17(論文提出済)で発表する予定である。 当初計画に加えて,従来の金被覆感温磁性体では被覆なしの感温磁性体よりも発熱効率を向上できるが,金被覆によって外部からの磁束が遮蔽されるため,検出されるピックアップ電圧の変化量が被覆なしの感温磁性体のときよりも大きく減少するという問題があった。そこで,温熱療法に適した発熱効率を向上させると共に,温度変化によるピックアップ電圧の変化量が感温磁性体単体のときよりも大きい発熱体を開発している。この成果を基にして2件目の特許として現在申請準備作業を進めており,同時に国際学会ICMR2017(論文提出済)で発表し,原著論文を作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりに,磁場印加コイルの内側に対称的に設置する三つの検知コイルの誘導起電力を手かがりとした「磁性体の位置探索方法」を提案し,物理実験によってその妥当性を検証した。同時に,過去に提案した「回転走査による体動アーチファクト低減法」において,新たに複数検知コイルを用いることで遅延時間を短縮できることを明らかにした。さらに,「磁場印加検知ユニット」および「ロボットアームによる位置探索用プログラム」を作成し組み合わせることで,「磁性体の位置探索システム」を開発した。また,磁場環境下でも安定してLock-in Amplifierに参照信号を入力するために無誘導抵抗を導入すると共に,ロボットアームや計測装置による環境ノイズを除去する「電圧計測用プログラム」をLabVIEWで開発することで,磁性体の透磁率に依存する信号の精度を向上した。当初の計画に加えて,従来の金コート感温磁性体よりも温度変化による信号の変化量が大きく,同等の発熱効率を持つ発熱体を開発している。 以上により,本研究が当初の予定通り進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ。フィードバック制御機構の計測・制御用プログラムを開発する。 Ⅱ。自動定温加熱治療システムを試作する。 Ⅲ。物理実験および動物実験により本手法の妥当性と安全性を評価する。
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