研究課題/領域番号 |
16J09670
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松田 裕貴 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ユーザ参加型センシング / アーバンセンシング / モバイルセンシング / 行動変容 / ゲーミフィケーション / 割り込み |
研究実績の概要 |
平成28年度は,下記研究課題について実施した. 1.ユーザ参加型センシング基盤の研究開発 -- (1)当研究の中核の技術となる「ユーザ参加型センシング」を実環境に導入するために,必要不可欠な「ユーザ参加型センシング基盤」の設計・実装を行った.(2)ユーザ参加型センシングシステムの実装容易性について研究代表者が過去に作成した同等のシステムとの比較により評価を行い,容易にユーザ参加型センシングシステムを作成・運用可能であることを示した.(3)ユーザ参加型センシング基盤のユーザクライアントアプリケーションをGooglePlayおよびAppStoreに一般公開し,自治体の主催する街歩きイベントやスタンプラリー,観光といった,一般ユーザが参加することが想定される環境下で運用することにより,多様なセンシングシナリオの運用性能を検証した. 2.インセンティブ機構の調査・設計 -- ユーザ参加型センシングを持続可能なシステムとするために必要な「インセンティブ機構」について,実イベントに調査システムを導入し,ユーザのモチベーションの変化に関して調査を行った.また,この調査に基づきインセンティブメカニズムの検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体的に期待通りに研究開発が進捗している. 課題1「ユーザ参加型センシング基盤の研究開発」においては,平成28年度において基盤のベースとなる部分の開発を完了している.この基盤を用いることで,スマートフォン搭載のセンサー(加速度センサーなど)を用いた基本的なセンシングシナリオ(タスク)をWeb管理システム上から発行可能となっており,かつ複数のシナリオを同時進行することが可能である.また,この基盤は一般公開しており,さらに一般ユーザが参加するイベントにおける実証実験を行うことにより,実運用が可能であることを検証している.その成果を国内研究会にて発表し,高い評価を得た(最優秀プレゼンテーション賞および優秀論文賞を獲得). また,平成29年度に実施予定であった,課題2「インセンティブ機構の調査・設計」についても着手しており,実際のイベントにおいてユーザのシステムへの参加意欲がどのように変化するかについて調査を行い,モチベーション生成・喪失のメカニズムの一部を明らかにした.これに基づき,課題1の基盤にインセンティブ機構を組み込むための設計を行い,国内研究会において発表している. 以上から,当初の計画以上に研究開発が進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,下記研究課題について実施する. 1.インセンティブ機構の研究開発 -- (1)行動変容を促すアルゴリズムの検討:ユーザ参加型センシングにおけるユーザのモチベーション生成・喪失のメカニズムについて更なる調査を実施するとともに,ゲーミフィケーションを始めとするユーザの行動変容を促す手法を検討し,設計・実装・評価を行う.(2)最適なユーザへの割り込み手法の検討:ユーザの時空間コンテキストに基づく適切なタイミングにおけるユーザへのタスク依頼手法について検討を行い,設計・実装・評価を行う.この際に,行動変容を促すのアルゴリズムの有無による効果の違いについて実践的な検証を行う. 2.センサデータ解析に基づく環境推定機構 -- (1)環境状況の推定手法の検討:ユーザ参加型センシングを用いた環境の推定手法として,道路や施設における混雑度などの推定手法を検討する.推定にあたっては,一般ユーザの保有するスマートフォンのセンサデータおよびユーザからの感覚的情報を複合的に解析するアルゴリズムを設計し,実装・評価する. 3.実環境における実証実験 -- 課題1.および課題2.にて実装した機構を平成28年度に開発している「ユーザ参加型センシング基盤」へと組み込み,実環境における実験を行い性能を評価する.
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