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2017 年度 実績報告書

日本固有科である最原始昆虫の遺伝的構造から紐解く複雑な日本列島の形成史との関連性

研究課題

研究課題/領域番号 16J09705
研究機関信州大学

研究代表者

竹中 將起  信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード種分化 / ハンドメイティング / 系統地理 / 遺伝子 / 水生昆虫 / 隠蔽種
研究実績の概要

生物学的種概念に基づく「種分化」とは、分断された集団間での生殖的な隔離機構の進化であり、集団が分断してから異なる種に至る分化メカニズムとされる。種分化メカニズムの解明は、集団がどのように分断し、それぞれの集団において多様な形質を蓄積しながら生物が進化してきたのかを探る上で最も重要な課題である。そして、集団の分断は種分化最初期の重要なステップである。
本研究で、対象としたガガンボカゲロウは日本固有科1属2種と極めて小さな分類群であり、限定的なハビタットである山岳源流域に適応し、孤立・散在的となりがちである。さらに、翅を有する成虫期も数日と短く、飛翔能力が弱い。 そのため、集団間の接続性は低いと予想され、遺伝的に分化していると予想される。実際に、遺伝子解析の結果から地域集団ごとに遺伝的に分化していることが明らかとなってきた。解析領域は、mtDNA 16S rRNA,COI領域、およびnDNA 28S rRNA、 PEPCK領域を用いた。その結果、4領域においてガガンボカゲロウは地域集団レベルにおいて大きく5つのクレードに分化していることが明らかとなった。これらのクレード間の遺伝的分化は、他のカゲロウ類における種間レベルの分化にも相当するにも関わらず、外部形態などの分類の鍵となるような分類学的鍵形質に差異は認められていない。
そこで,5つのクレード間の関係についてより詳細に調べるために、本研究で開発した「ハンドペアリング」法を用いた繁殖実験の手法、および繁殖実験の成功を分子同定による検証する方法を用いて繁殖実験を実施した。その結果、生殖隔離が弱い集団から完全に生殖隔離が成立している集団までを内包する状態であることが明らかとなった。ガガンボカゲロウの進化史と合わせて考えると輪状種のような状態を留めている結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ガガンボカゲロウ類の分布域を網羅する地域を対象とした分子系統地理学的研究に取り組んでいる。これまでの研究で、ほぼ前例のない中央構造線で遺伝構造が大きく分化する傾向を見事に究明し、この成果を国際専門誌に論文投稿し、審査結果を受け、再投稿に向け準備に取り組んでいる。
また、遺伝的分化の大きな種内系統群間での生殖的隔離機構の有無に関しては、原始的昆虫類では初めてとなる「ハンドペアリング」法を確立させ、交配実験を展開している。さらに、人為的な交配の成否に関してはオス親に特異的な遺伝子配列をマーカーにした検証も実施し、実際に授精がなされていることを分子同定している。これらの成果についても国際専門誌に論文投稿準備中である。また、これらの手法を使って、遺伝的に大きく分化したクレード間における人工交配を実施している。得られた成果はいずれも国際誌上での公表の準備に取り掛かっている。既に論文公表をめざして取りまとめ段階にある研究も複数あり、また新たな成果が期待される進行中の実験研究もあるなど、進展状況は良いと考えている。

今後の研究の推進方策

生物学的種概念に基づく「種分化」とは、分断された集団間での生殖的な隔離機構の進化であり、集団が分断してから異なる種に至る分化メカニズムとされる。種分化メカニズムの解明は、集団がどのようにして分断し、種分化に至ることで、それぞれの集団において多様な形質を獲得し、生物が進化してきたのかを探る上で最も重要な課題であり、集団の分断は種分化最初期の重要なステップである。本研究で、対象としたガガンボカゲロウは日本固有科1属2種と極めて小さな分類群であり、限定的なハビタットである山岳源流域に適応し、孤立・散在的となりがちである。さらに、翅を有する成虫期も数日と短く、飛翔能力が弱い。 そのため、集団間の接続性は低いと予想され、遺伝的に分化していると予想される。そのため、集団が分断し種分化に至るまでの種分化最初期のメカニズムについて究明する好適な分類群といえる。
遺伝子解析の結果、ガガンボカゲロウ種内に他のカゲロウ類における種間レベルに相当する遺伝的分化が内包していることが明らかとなった。さらに、これらの遺伝系統群の間において繁殖実験を実施した結果、生殖隔離が弱い集団から完全に成立している集団までを内包する状態であることが明らかとなった。種分化連続体と呼ばれる状態を現存しており、種分化研究に重要な種群となりうる。
そこで、種分化連続体と呼ばれる状態をどの程度維持しているのか、また永い間隔離されたことによる異なる生理・生態的な形質がどの程度蓄積されているのかについて検討する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Species Diversity of Insects in Japan: Their Origin and Diversification Process2017

    • 著者名/発表者名
      Tojo, K., Sekine, K., Takenaka, M., Isaka, Y., Komaki, S., Suzuki, T., Schoville, D.S.
    • 雑誌名

      Entomological Science

      巻: 20 ページ: 357-381

    • DOI

      10.1111/ens.12261

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 琉球列島・渡嘉敷島におけるタイワンモンカゲロウの初記録2017

    • 著者名/発表者名
      竹中 將起・趙 在翼・東城 幸治
    • 雑誌名

      New Entomologist

      巻: 66 ページ: 30-32

    • 査読あり
  • [学会発表] 幅広く段階的に遺伝分化した系統群を包含する昆虫種を対象とした繁殖生態・種分化機構 ~ガガンボカゲロウにおける生殖的隔離確立プロセスの究明~2018

    • 著者名/発表者名
      竹中將起・東城幸治
    • 学会等名
      第65回日本生態学会
  • [学会発表] 紀伊半島での大きく遺伝的分化した種内系統群間での生殖的隔離の有無について~ガガンボカゲロウの系統地理と種分化~2017

    • 著者名/発表者名
      竹中將起・東城幸治
    • 学会等名
      日本昆虫学会第77回大会
  • [学会発表] 千曲-信濃川水系で新規発見されたカワヨシノボリ集団の起源について:分子系統解析による由来推定2017

    • 著者名/発表者名
      竹中將起・小林建介・柳生将之・谷野宏樹・鈴木智也・東城幸治
    • 学会等名
      日本動物学会第88回大会
  • [学会発表] 分子マーカーを用いた止水棲昆虫のワンド利用およびワンドの接続性-河川生態系における河川ワンド・たまりの機能評価-2017

    • 著者名/発表者名
      竹中將起・冨田和宏・谷野宏樹・東城幸治
    • 学会等名
      第82回日本陸水学会
  • [学会発表] カゲロウ目昆虫におけるハンドペアリングによる繁殖実験2017

    • 著者名/発表者名
      竹中將起・東城幸治
    • 学会等名
      2017年度日本動物学会中部支部大会

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公開日: 2018-12-17  

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