研究実績の概要 |
本研究が目指すのは、タンパク質凝集体難病の治療戦略の創出である。異常タンパク質凝集体の蓄積は、筋委縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病など多様な難治性筋肉疾患に共通する形態学的特徴であり、発症の要因とも考えられている。タンパク質凝集体難病の克服に向けて、本研究では筋肉難病クリスタリノパチーをモデル疾患に据えて小胞体微小環境コントロールに立脚した分子基盤の整備を目指す。我々の研究グループはキメラ分子小胞体型クリスタリンの有用性を細胞株で確認済みである(Yamashita et al., FEBS Lett., 2013; Yamamoto et al., Biochem Biophys Res Comm., 2014)。すなわち小胞体型クリスタリンの標的分子は治療標的分子として応用できる可能性が高い。そこで、平成28年度はアフィニティ精製によって得られた「小胞体局在型クリスタリンの標的分子」の候補分子群をsiRNAでノックダウンし、クリスタリノパチーの発症原因の一つであるR120G変異体と小胞体局在型クリスタリンを共発現させタンパク質凝集体形成阻害能を評価した。その結果、小胞体タンパク質CLN6が小胞体局在型クリスタリンと共同で機能し凝集体形成抑制に関与していることを明らかにした。また、CLN6ノックダウン細胞にR120Gを単独で導入すると凝集体形成細胞の割合が上昇し、逆にCLN6を過剰発現させるとR120G凝集体形成が抑制された。さらに、免疫沈降の結果CLN6は小胞体局在型クリスタリンにもR120G変異体にも物理的相互作用を示した。以上の結果からCLN6単体でも凝集体形成抑制能を持つことを明らかにした。この凝集体形成抑制機構がタンパク質分解系に寄与しているか否かをLC-3のタンパク質量で評価した。その結果、分解系の機能亢進は認められなかった。
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