研究課題/領域番号 |
16J09876
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
亀島 晟吾 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 非平衡プラズマ / プラズマ化学 / 温室効果ガス / 水素 / C1化学 |
研究実績の概要 |
本研究では環境・エネルギー分野で重要なCH4/CO2改質(CH4+CO2→2H2+2CO)に対して,非平衡プラズマ・触媒ハイブリッド反応系を応用し,非平衡プラズマが誘起する反応促進メカニズムを解明する。2016年度は,改質における課題である固体炭素析出を主眼に置き,非平衡プラズマによる炭素析出の抑制および反応促進機構の解明を行った。 非平衡プラズマにより,CH4転換率を保ったまま炭素析出を抑制し,H2およびCO選択率が向上することを確認した。炭素析出は,主にCH4の逐次的な脱水素(CH4→CHx→C)により生じるが,改質中の副反応により生じるH2Oが活性化され,CHx種の酸化(CHx+H2O→CO+(x+2)/2H2)を促進したと考えられる。固体炭素の蓄積は触媒活性の低下を招くため,その抑制は重要である。本結果は,炭素析出の主要因であるCHx種が,非平衡プラズマにより効果的に除去されることを示している。 改質後の触媒ペレットを分割し,ペレット断面における炭素析出分布を調査したところ,非平衡プラズマをハイブリッドしない場合(熱反応),450℃程度ではペレット中心に近いほど多量の炭素が確認された。反応温度の上昇によって全体の析出量が減少し630℃では析出炭素が確認されなくなった。低温では反応性が低く,ペレット細孔内部まで拡散し反応する一方,高温では反応性が高いため,細孔内部に拡散する前にペレット表面で反応が完結するためである。非平衡プラズマをハイブリッドした場合,低温においても高温熱反応に近い分布が得られた。非平衡プラズマによりガス分子が低温において高い活性を獲得し,細孔内部に拡散する前にペレット最表面で反応したと考えられる。非平衡プラズマと触媒の相互作用は,触媒ペレット最表面においてシナジーを顕在化させるものの,細孔内部まではその効果が及ばないことを示唆する重要な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに開発したパルス診断法を応用し,プラズマパラメータがCH4/CO2改質に及ぼす影響をパラメトリックに解析することに成功した。その結果,非平衡プラズマ・触媒間の相互作用が触媒ペレット最表面で顕在化することを実証した。これによって非平衡プラズマが誘起する複雑な物理・化学過程の解明には,触媒ペレット細孔内部で生じる反応とペレット最表面の反応とを分離する必要があることが明確に示された。これらの結果を基に,論文(1編)を執筆し,国際ジャーナルに発表した。 さらに2017年度実施予定のラマン分析の予備実験を行い,CH4/CO2改質のフットプリントとして機能する析出炭素の分布を調べることで反応機構の解析を行った。また,酸化Niや重要な反応中間体と考えられるCO3種の観察に成功しており,順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
重水素(D)による同位体ラベリングは,速度論的同位体効果が最も顕著に発現し,律速段階の解析に有用である。2017年度はCD4を使用し,CH4脱水素に起因する律速段階の解析を進める。同時に,生成物の同位体元素取り込みパターンの変化から,非平衡プラズマにより生成される活性種に起因する反応中間体を同定し,非平衡プラズマによる律速段階の反応促進メカニズムを解明する。 また,非平衡プラズマ・触媒間相互作用によるシナジーが最も顕著に発現する触媒表面をin-situラマン分析可能な反応器を開発する。これによって非平衡プラズマが触媒活性に与える影響を正確に抽出する。
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