研究課題/領域番号 |
16J10051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 康平 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 植生学 / 放牧地生態系 / モンゴル |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は,ユーラシアステップ東部地域を対象として植生景観の健全性を維持可能な放牧方法を地域ごとに明らかにすることである.当該年度はモンゴル中東部に位置するセレンゲ県,ボルガン県,アルハンガイ県,トゥブ県,スフバートル県,ドルノゴビ県等において,植物の生育期である7月下旬から8月下旬にかけて約1カ月間の現地調査を実施した.現地調査では牧民世帯への聞き取り調査と各牧民世帯の行動圏内における植生調査を実施した.聞き取り調査は全10の牧民世帯から行い,季節移動の回数や場所,季節移動するタイミング,季節や家畜種ごとに重要な植物種,水資源の確保等について広く情報収集を行った.植生調査は聞き取り調査で明らかになった季節ごとの滞在場所周辺の植生構造を記録した.聞き取り調査と植生調査で得られた情報を基にして,モンゴル中東部の森林ステップ帯,ステップ帯,砂漠ステップ帯における季節移動パターンと各季節に利用する植物種の類型化を行った.同時に研究代表者が2011年度から2016年度にかけて収集した植生データを用いて,種数を指標にした植生劣化評価を行った.類型化の結果と植生劣化評価の結果,聞き取り調査で収集した情報を合わせて解釈することで,植生景観を維持できる放牧利用パターンの解明と植生景観の劣化を引き起こす放牧利用を行わなければならない原因究明に取り組んだ.これらの研究成果に関して現在国際誌へ論文投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
牧民世帯への聞き取り調査と各牧民世帯の行動圏内における植生調査に関して順調にデータの収集を行うことができ,牧民の植生景観利用パターンの類型化が進展したため.また研究代表者が2011年度から2016年度にかけて収集した植生データを用いて植生劣化評価を行い,その成果も用いることで植生景観の健全性を維持可能な植生景観利用パターンの解明についても進展があったため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当該年度と同様の聞き取り調査と植生調査をモンゴル西部地域で実施し,牧民の植生景観利用パターンの広域的な類型化を進める.合わせて,継続して植生景観の健全性を維持可能な放牧利用パターンの解明と植生景観の劣化を引き起こす放牧利用を行わなければならない原因究明に取り組む予定である.モンゴル西部における現地調査の実施が困難である場合は,これまで収集したデータの追加解析に注力する.
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